7月に入って本格的な暑さが始まると、スーパーの売り場や飲食店の看板で一気に目立ちはじめるのが「土用の丑の日」という文字ですよね。
香ばしいタレの匂いに誘われて、「よし、今年も奮発してうなぎを食べよう!」と楽しみにしている方も多いのではないでしょうか。
でも、毎年の恒例行事として当たり前のように食べている「土用の丑の日」について、その正確な意味や由来までは意外と知らないものですよね。
家族や子供から、
なんて素朴な質問をされて、パッと答えられずに困ってしまった…という経験がある方も少なくないはずです。
そこで今回は、「土用の丑の日」という言葉に隠された面白いカレンダーの仕組みや、うなぎを食べるようになった驚きの歴史的由来について、分かりやすく紐解いていきます。
なお、この「うなぎシリーズ」の記事は、食と健康のプロである管理栄養士の妻「のりりん」が、すべての執筆・監修を担当しています!
この記事を読めば、今年の土用の丑の日の食卓で、家族みんなで「なるほど!」と笑顔になれる素敵なウンチクがバッチリ身につきますよ!
執筆・監修:のりりん専門官(管理栄養士)
聖徳大学短期大学部 家政科(食物栄養専攻)卒業後、「管理栄養士」の国家資格を取得。当ブログでは、食や健康に関するカテゴリーの監修や執筆を担当しています。専門的な視点から、皆さまの「食と健康」をサポートする情報をお届けします。
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そもそも「土用の丑の日」って何?カレンダーと暦(こよみ)の仕組み
まずは、多くの人がなんとなくスルーしがちな「土用の丑の日」という言葉そのものの正体から明かしていきましょう。
名前に「土」が入っているため、「土用の丑の日=土曜日のこと?」と勘違いしているお子さんも意外と多いのですが、実はこれ、曜日とはまったく関係がありません。
日本の古いカレンダー(暦)のルールを知ると、「なるほど、だからこの時期なのか!」と一発でスッキリ納得できるようになります。
「土用」とは?春夏秋冬にある季節の変わり目のこと
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「土用(どよう)」を一言でいうと、「季節が移り変わる、それぞれの間(すき間)にある約18日間の期間」のことです。
昔の日本では、世の中のすべてのものは「木・火・土・金・水」の5つの要素から成り立つという「五行説(ごぎょうせつ)」という考え方がありました。
これに四季を当てはめて、春を「木」、夏を「火」、秋を「金」、冬を「水」と割り振ったのですが…お気づきでしょうか。
「土」が一つ余ってしまいますよね。
そこで、春から夏、夏から秋、秋から冬、冬から春へと、季節が切り替わる直前の「それぞれのすき間の約18日間」を「土の性質が強まる期間=土用」と呼ぶことにしたのです。
つまり、土用は夏だけにある特別なものではなく、すべての季節の間に存在します。
その中で、「本格的な厳しい夏が始まる直前の、一番体調を崩しやすい時期(夏の土用)」が、現代の私たちに最も馴染み深いものとして残ったわけです。
「丑の日」とは?カレンダーに隠された12の動物
では、もう一つの「丑(うし)の日」とは何でしょうか?
これはみなさんお馴染みの「子・丑・寅・卯・辰・巳…」という12種類の動物、つまり「十二支(じゅうにし)」のことです。
私たちは十二支というと「今年は寅年」「来年は卯年」というように、1年ごとに交代するイメージが強いですよね。
しかし昔の日本では、年の他にも「1か月ごと」、さらには「1日ごと」にも十二支を順番に当てはめてカレンダーを数えていました。
12日ごとに「子の日」「丑の日」「寅の日」…と、グルグル順番に巡ってくる仕組みです。
指折り数えていくと分かりますが、十二支は12個で1サイクルなので、「夏の土用(約18日間)」の期間中には、必ず1回か2回、この「丑の日」が巡ってくることになります。
つまり「土用の丑の日」を分かりやすく合体させると、 「夏の季節の変わり目(約18日間)の土用期間中に巡ってきた、たまたま『丑(うし)』にあたる日のこと」 という意味になります。
年によってはこの18日間の間に「丑の日」が2回巡ってくることもあり、その場合は1回目を「一の丑」、2回目を「二の丑」と呼びます。
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江戸時代の天才が仕掛けた!うなぎを食べるようになった由来
土用の丑の日の意味が分かったところで、次はいよいよ「なぜ土用の丑の日にうなぎを食べるのか?」という最大の謎に迫りましょう。
実はこれ、歴史的な大天才が仕掛けた「日本最古のキャッチコピー」であり、現代の私たちがSNSで目にする「バズマーケティング」の先駆けとも言える面白い大ヒット作だったのです。
売れない夏うなぎを救え!平賀源内が放った日本最古のキャッチコピー

江戸時代、うなぎを食べる文化を爆発的に広めた立役者は、教科書でもおなじみの天才学者・平賀源内(ひらがげんない)だと言われています。
当時のうなぎ屋さんは、ある大きなお悩みを抱えていました。
それは「夏になると、うなぎがまったく売れない」ということ。
うなぎの本来の旬は、身に脂がのる冬です。さらに、夏の暑い盛りに油っこい蒲焼きは敬遠され、うなぎ屋さんはどこも商売あがったりで頭を抱えていました。
困り果てたあるうなぎ屋の店主が、知り合いだった平賀源内のもとへ「どうしたら夏にうなぎが売れるだろうか」と相談に訪れます。
そこで源内がひらめいたアイデアが、「本日、土用丑の日」と書いた紙を店先に大きく貼り出すことでした。
当時の江戸には、「丑の日に『う』のつく食べ物を食べると病気にならない(夏バテしない)」という民間伝承(言い伝)がうっすらと存在していました。
源内はそこに着目し、「今日は丑の日だから、みんな『う』のつくうなぎを食べよう!」と視覚的に強くアピールしたのです。
この最高にキャッチーな看板は大評判となり、そのうなぎ屋は大繁盛! 他のうなぎ屋もこぞって真似をし始め、いつしか「土用の丑の日=うなぎを食べる日」という文化が日本全国に定着していきました。
実は万葉集の時代から?大伴家持も認めたうなぎの健康パワー
平賀源内がバズらせたことで一気に国民的行事となったわけですが、実は日本人が「夏バテにはうなぎが良い」と気づいていた歴史は、江戸時代よりもさらに昔にまで遡ります。
なんと、奈良時代に編纂された日本最古の和歌集『万葉集』の中に、すでにうなぎの健康効果を讃える歌が残されているのです。
歌を詠んだのは、当時の大貴族であり詩人でもある大伴家持(おおとものやかもち)。彼は、夏バテでガリガリに痩せてしまった友人に向けて、こんな歌を贈っています。
「石麻呂(いしまろ)に 吾(われ)物申す 夏痩せに 良しというものぞ 鰻(むなぎ)漁(と)り食(め)せ」
これを現代風に訳すと、「石麻呂くん、君にアドバイスがあるんだ。夏痩せにはうなぎが良いらしいから、ぜひ捕まえて食べて元気を出してよ!」という意味になります。(※当時はうなぎのことを「むなぎ」と呼んでいました)
つまり、平賀源内が仕掛けたキャッチコピーは完全な思いつきではなく、「うなぎを食べると本当に元気になる」という、日本人が1000年以上も昔から体感してきた確かな健康パワーがベースにあったからこそ、現代まで続く大ヒット文化になったのですね。
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うなぎが夏バテ予防に最強と言われる栄養学的根拠
ここからは、管理栄養士である私(のりりん)の専門分野!「なぜうなぎが夏バテに効くのか」を、栄養学の視点からプロとして分かりやすく解説します。
昔の人が経験から知っていたうなぎのパワーですが、現代の科学で見ても、まさに「天然のマルチサプリメント」と呼べるほど驚異的な栄養素が詰まっているのです。
現代の「エアコン冷えバテ」にも効くビタミンB1の爆発力

うなぎに含まれる栄養素の中で、夏バテ予防の主役となるのが「ビタミンB1」です。
その量はなんと、うなぎの蒲焼き100g(約1串分)で、大人が1日に必要な量をほぼ満たしてしまうほど圧倒的です。
ビタミンB1は、私たちが食べたご飯やパンなどの「炭水化物(糖質)」を、体や脳を動かす「エネルギー」に変えるために絶対欠かせない潤滑油のような存在。
これが不足すると、どんなに食べてもエネルギーを作れず、体がだるくなったり、疲労感が抜けなくなったりします。
さらに現代の夏バテは、猛暑による暑さだけでなく、冷房の効いた室内と外の暑さを行き来することで自律神経が乱れる「エアコン冷えバテ」が主流です。
自律神経の働きを正常に保ち、体温調節機能を維持するためにも、このビタミンB1と、うなぎに豊富に含まれる「タンパク質」の組み合わせは最強の味方になってくれます。
【食べ合わせの謎】うなぎと梅干しは本当にNG?実はお互いを高め合う神コンビ

昔から「一緒に食べるとお腹を壊す」と言い伝えられている「うなぎと梅干し」の食べ合わせ。
みなさんも一度は耳にしたことがありますよね。
「高級品のうなぎを贅沢に食べ過ぎないための戒め」や「贅沢品と質素なものの組み合わせを戒めるため」など諸説ありますが、実はこれ、栄養学的な観点から見ると「むしろ一緒に食べるべき、最高の神コンビ」なんです!
うなぎは脂質(脂のり)が豊富なため、胃腸が弱っているときは少し消化に負担がかかることがあります。
そこに梅干しの「クエン酸」が加わると、胃酸の分泌が促されて胃腸の働きが活発になり、うなぎの油っぽさをすっきりと消化しやすくしてくれます。
さらに、梅干しのクエン酸には「疲労回復効果」があるため、うなぎのビタミンB1と合わさることで、夏バテ予防効果が何倍にも跳ね上がります。
まさに、お互いの良さを高め合う、これ以上ない理想的なメニューなんですよ。
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うなぎだけじゃない!猛暑を乗り切る「う」のつく食べ物4選
江戸時代の平賀源内のエピソードでも少し触れましたが、古くから日本では「土用の丑の日に『う』のつくものを食べると夏バテしない」という知恵がありました。
実はこれ、うなぎ以外にも理にかなった素晴らしい食材がたくさんあります。
ここでは、夏の体に不足しがちな栄養を補ってくれる代表的な「う」のつく食べ物4選を、のりりん目線のワンポイント解説付きでまとめました。
| 食材 | 主な栄養・メリット | 夏バテへの効果 |
| ① 梅干し | クエン酸・塩分 | 疲労回復・熱中症予防・食欲増進 |
| ② うどん | 消化の良さ・炭水化物 | すばやいエネルギー補給・胃腸への負担軽減 |
| ③ 瓜(きゅうり等) | 水分・カリウム | 体の熱を逃がす・むくみ解消 |
| ④ 牛(牛肉) | 良質なタンパク質・鉄分 | 筋肉や体力の維持・スタミナ補給 |
①【梅干し】クエン酸で疲労回復

先ほど「うなぎとの相性も抜群」とお伝えした「梅干し」は、単体でも最強の夏バテ予防食です。
酸っぱさの主成分である「クエン酸」は、体内の疲労物質を分解してエネルギー代謝をスムーズにしてくれるため、だるさや疲れを吹き飛ばす効果があります。
さらに、汗で失われがちな塩分やミネラルも同時に補給できるため、熱中症対策としてもこれ以上ない優等生です。
②【うどん】食欲がなくてもサラッとエネルギー補給

暑さで胃腸が弱ってくると、お肉や固いものを食べる元気がなくなってしまいますよね。
そんなときでも、ツルツルと喉を通りやすい「うどん」は強い味方です。
うどんは数ある炭水化物の中でも特に消化・吸収が早く、胃腸への負担を最小限に抑えながら、活動に必要なエネルギーをすばやくチャージできます。
ただし、冷たいうどんばかりだと胃腸が冷えてしまうので、生姜やネギなどの薬味をたっぷり添えて、お腹を冷やさない工夫をするのがプロのアドバイスです。
③【瓜(きゅうり・スイカ・冬瓜)】体にこもった熱を逃がす水分補給
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漢字に「瓜(うり)」がつく野菜や果物も、すべて「う」のつく食べ物に含まれます。
きゅうり、スイカ、メロン、冬瓜、ゴーヤなどがこれにあたります。
これらは成分のほとんどが水分でできており、天然の水分補給として最適です。
さらに、体内の余分な熱を逃がしてくれる働きがあるほか、利尿作用のある「カリウム」も豊富。
汗でカリウムが不足すると足がつりやすくなったりだるさが出たりするため、夏の脱水予防には欠かせない食材たちです。
④【牛(牛肉)】スタミナ源のタンパク質
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「最近、どうもスタミナ不足だな…」と感じたときは、やっぱり「牛肉」です。
体を作るベースとなる「良質なタンパク質」が豊富なのはもちろん、酸素を全身に運んで貧血やだるさを防ぐ「鉄分」もしっかり含まれています。
脂っこい部位が重く感じるときは、赤身の多い部位を選んだり、おろしポン酢でさっぱりと食べたりすると、胃もたれせずに効率よくスタミナを補給できますよ。
まとめ:土用の丑の日は「う」のつく食べ物で元気に夏を乗り切ろう!
今回は「土用の丑の日」について、言葉の意外な意味からうなぎを食べるようになった面白い歴史、そして栄養学的な理由までを詳しく紐解いてきました。
最後に、今回ご紹介した大切なポイントをおさらいしておきましょう。
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「土用」とは曜日ではなく、季節の移り変わる“それぞれのすき間”にある約18日間のこと
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「丑の日」はカレンダーに1日ずつ割り振られた十二支のサイクルのこと
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「土用の丑の日にうなぎを食べる」文化は、江戸時代の天才・平賀源内が仕掛けた大ヒット大作がきっかけ
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うなぎの豊富な「ビタミンB1」は、現代のエアコン冷えバテの予防にも最強の味方
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「うなぎと梅干し」はNGどころか、お互いを高め合う栄養学的な神コンビ!
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うなぎ以外にも、梅干し・うどん・瓜・牛肉など「う」のつく食材は夏バテ予防に効果的
毎年の恒例行事として何気なく迎えていた土用の丑の日も、こうした背景を知ると、昔の人の知恵や歴史のロマンが詰まっていることが分かって、より一層美味しくうなぎを味わえそうですよね。
今年の夏はぜひ、大切なご家族と一緒に「う」のつく美味しい食べ物をたくさん食べて、厳しい猛暑を元気に乗り切っていきましょう!


