一般的に錆びない金属と知られているステンレスも、実際には間違った使い方をすると錆びることもあるってご存じですか?。
キッチンを見渡せば、シンクから包丁、お鍋やフライパンなどあらゆる調理器具にステンレスは使われています。
たとえ高価なものであっても、新婚さんなら「一生もの」と思い、ドイツのFissler(フィスラー)やZWILLING(ツヴィリング)、アメリカのVita Craft(ビタクラフト)などをセットで買い揃える方も多いことでしょう。
ちなみに、我が家の奥さんが義母にねだり「嫁入り道具」で買い揃えたフィスラーの調理器具セットは、20年以上経った現在も現役で活躍しています。
しかし、長年使っていると、錆びないといわれるステンレス製品もなぜか錆びることもあるという事実。
錆びないはずのステンレス製品が、錆びる原因とは何でしょう。
今回のメインテーマは2つ。
・ステンレスはなぜ錆びない?
・ステンレスが錆びる原因は?
さらに、ステンレス製品の錆びの予防方法や、万一錆びてしまったときの簡単な錆びの落とし方まで探っていきましょう。
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ステンレスは錆びるの?錆びないの?
一般的には、ステンレスは錆びない金属だといわれていますが、正確には錆びにくいだけで、ステンレスは決して錆びないわけではありません。
ステンレスとは?
Wikipediaによれば、
ステンレス鋼(ステンレスこう、英: stainless steel)とは、クロム、またはクロムとニッケルを含む、さびにくい合金鋼である。ISO規格では、炭素含有量 1.2 %(質量パーセント濃度)以下、クロム含有量 10.5 % 以上の鋼と定義される。名称は、省略してステンレスという名称でもよく呼ばれる。かつては不銹鋼(ふしゅうこう)と呼ばれていた。
簡単にいえば、ステンレスとは鉄を主な材質に、クロムやニッケルなど腐食に強い材質を混ぜ合わせ作られた錆びにくい金属。
そもそも英語の「ステンレス」という名称の由来を紐解けば、
・ステンレスの「ステン」は英語で「錆び」
・ステンレスの「レス」は英語で「~ない」
そう、ステンレスを直訳すれば「錆びない」となります。
大正時代に初めて日本にステンレス鋼が海外から入ってきた当時は、錆びないスチール(鋼)という意味で不銹鋼(ふしゅうこう)と呼ばれたり、錆に耐えるスチール(鋼)として耐錆鋼(たいせいこう)とも呼ばれていました。
明治時代以前まで主流であった鉄や合金が短期間であっという間に錆びてしまうことに対し、錆びにくい(ほぼ錆びない)金属ステンレスは、まさに日本人にとって魔法の材質だったのです。
ステンレスは錆びない・錆びにくい理由
ステンレスも鉄の仲間ですから、錆びやすいはずでは?と思われるのも当然。
しかし、先に紹介したように鉄に10.5%以上のクロムを混ぜられ作られるステンレスは、クロムが空気中の酸素と結びつくことで厚さ1~3nm(100万分の1~3㎜)という極めて薄い酸化被膜(不働態被膜)が形成されています。
酸化被膜(不働態被膜)も錆びの一種みたいなものではあるのですが、どんどん鉄を腐食させてしまう赤錆とは違い、外部からの影響を遮断する保護膜として働いてくれる存在となります。
つまり、混合されたクロムの働きによる酸化被膜で保護されるステンレスは、水や酸素と接しても保護膜となる酸化被膜が破壊されない限り錆びることがないというわけです。
さらにステンレスの凄いところは、一度酸化被膜が破壊されたとしても、再びクロムと酸素が結びつくことで錆を防ぐ酸化被膜が自己再生されるという点でしょう。
鉄にクロムを混ぜることで、わざと一種錆びのような酸化被膜(不働態被膜)を作り錆びを防ぐ。
なんだか、錆の重症化を防ぐワクチンみたいな感じですね。
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ステンレスが錆びる原因とメカニズム
基本的に、表面をクロムと酸素が結びついて作られた厚さ1~3nmという極薄くも強い酸化被膜(不働態被膜)で覆われているステンレスは、少々乱雑に扱っても錆びることはありません。
錆びに強い、錆びにくいはずのステンレス製品が錆びる原因はというと、そのほとんどが他の金属からのもらい錆です。
もらい錆
錆びにくい、錆びないはずのステンレスが錆びる原因の最たるは、他の鉄やアルミ製品などからのもらい錆。
例えばキッチンのシンクが錆びやすい理由も、このもらい錆にあります。
ステンレス製のシンクに、鉄製のフライパンや缶詰、アルミ製の鍋やビールの空き缶など異種金属を放置・接触させていると、その間に水分が入ることで「電池作用」によって異種金属側が腐食を起こし、溶けだした鉄成分がステンレス表面へ移り、もらい錆となって腐食が進んでいきます。
日常生活上、ごく自然に起きえる環境でのもらい錆は、実際にはステンレス製品自体が錆びているわけではなく、ステンレスの表面を覆う酸化被膜(不働態被膜)の上に他の金属からの錆びが乗っているような状態です。
このあと紹介する、錆びの落とし方や予防方法を参考に長持ちさせてください。
塩分イオンによる酸化被膜の破壊
ステンレス製品に塩や油、あるいは水や食べかすなど汚れが残っていると、クロムが酸素と結合できず錆を防ぐ酸化被膜が形成されにくい。
海沿いの地域や、冬に凍結防止の塩カルが多く撒かれる地域などでは、あらゆる金属が錆びやすくなるといわれます。
ステンレスでさえも、表面を覆う錆びを防ぐ酸化被膜は塩素イオンによって破壊されてしまうのです。
自動車業界では凍結防止の塩カルが多く撒かれる北米仕様の車には、電気的に接点になる部分の部品の材質には、錆にくいステンレスが使われているほどです。
塩素性漂白剤が錆びの原因?!
キレイ好きな方ほど、ステンレスが錆びやすい環境を作ってしまっているかもしれません。
調理器具や食器などを常に綺麗に保つために、塩素系漂白剤を注いだシンクや容器に漬けおき洗いされている方も多いのではありませんか?。
たしかに、調理器具や食器の清潔を優先すれば必要な方法ではあるのですが、漂白剤の塩素はステンレスが錆びを防いでいる酸化被膜をも破壊してしまう原因になってしまうリスクもあります。
錆びにくいとされるステンレス製品も、塩素系漂白剤を使ったあとは、しっかりと洗い流すことを心掛けてください。
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ステンレス製品の錆びの落とし方!
錆びの一種ともいえる酸化被膜によって錆びない、錆びにくいはずのステンレスも、他の金属からのもらい錆びや、塩素による酸化被膜の破壊なども考えると、錆びないというより、錆びにくい金属というのが正しい表現のようですね。
ならば、万一ステンレス製品が錆びてしまったときに使える錆びの落とし方も知りたいところでしょう。
ステンレス製品の軽度な錆の落とし方
用意するのは、レック株式会社の「激落ちくん」で知られているメラミンスポンジ。
メラミンスポンジに水をつけ、錆びの部分を円を描くように丸く丸く優しく擦ります。
力を入れ過ぎるとステンレス表面を傷つけてしまうので優しく擦りながら、落ちた錆びや汚れ、残った水分は乾いた布でよく拭き取るという作業を繰り返すのがポイントです。
錆びが強い場合の落とし方
錆には酸が効く!といわれますが、ステンレス製品の錆びが強い場合には、先の激落ちくんシリーズの【激落ちくん】クエン酸という商品もおすすめ。
メラミンスポンジの研磨力に加え、クエン酸パウダーがスポンジ全体に溶け出し錆びを溶かして分解します。
頑固な錆びの落とし方
ステンレス製品の錆びに対し、激落ちくんで有名なメラミンスポンジやクエン酸入りの激落ちくんなど紹介しましたが、さらに頑固な錆びに対しては、中性洗剤やクリームクレンザー、重曹を塗布しながらメラミンスポンジや布で擦るといった強硬手段も必要になるでしょう。
先のクエン酸の力を利用すべく、お酢やレモン汁を混ぜて擦るのも一手です。
ステンレスの錆びを落とした後はしっかり乾燥!
軽度な錆び~頑固な錆びまで、ステンレス製品の錆びを落とすことができた後は、しっかり乾燥させ酸化被膜の生成を促すことを意識しましょう。
錆びを落とした直後のステンレス製品は、一旦酸化被膜が傷つけられた状態となることから、水分や塩分、汚れが付着してしまうと再び錆びやすくなってしまうからです。
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ステンレス製品の錆び予防!
本来は、錆びにくいステンレス製品でも扱い方によっては、十分に錆びることもあることはご理解いただけたと思います。
万一錆びてしまった際の錆びの落とし方も紹介しましたが、大切なポイントは、錆びの予防方法や錆びの再発防止方法。
水気は拭き取る!
ステンレス製品の錆びを防ぐには、水気に触れさせないことが重要なポイントです。
調理後や食器を洗ったあとのシンク、お風呂洗いあとの浴槽は面倒がらずに水気を雑巾やタオルでしっかり拭き取っておくようにしょう。
他の金属製品を置きっぱなしにしない!
ステンレス製品の上に、缶詰の空き缶やフライパン、缶ビールの空き缶やヘアピンなど異種金属を置きっぱなしにしないこと。
ステンレスと異種金属の間に水分が入り込むことで「電池作用」によって異種金属側が腐食を起こし、溶け出した鉄成分がもらい錆びとなるリスクが高くなります。
油汚れや塩素系漂白剤はしっかり洗い流す!
調理の油汚れやを放置したり、洗ったときの塩素系漂白剤の成分が残っていると、ステンレスの表面を錆びから守る酸化被膜が破壊されたり、形成されずに錆びてしまうことにつながります。
すべてのステンレス製品は、使ったら「しっかり洗い・しっかりすすぎ・しっかり乾燥」を心掛けましょう。
ステンレス製の浴槽の錆び予防!
ピカピカのステンレス製浴槽は清潔感もあって気持ちいいものですが、浴槽の底や内側に茶色い汚れがみられる場合がありますよね。
ステンレス浴槽の茶色い汚れは、主に貯水槽や水道管内に含まれる鉄成分が原因のもらい錆びと考えられます。
ステンレス浴槽は日々の洗浄・お手入れが大切になりますが、もらい錆びで茶色く汚れた場合には、レック株式会社の「激落ちくん」で知られているメラミンスポンジで優しく擦り、残った水分は乾いた布でよく拭き取ります。
錆び汚れが強い場合には、スポンジに粒子の細かいクリームクレンザーなどをつけ、擦り落とします。
まとめ
今回のテーマは、身近な金属ステンレスの錆びについて、
・ステンレスはなぜ錆びない?
・ステンレスが錆びる原因は?
を中心に、錆びの落とし方・予防方法まで探ってきました。
ステンレスは錆びないとされる一番の理由は、材質に含まれるクロムが空気中の酸素と結びつくことで形成される、厚さ1~3nm(100万分の1~3㎜)という極めて薄い酸化被膜(不働態被膜)が保護膜にとなり、錆から身を守っていることにあります。
とはいえ、他の金属(異種金属)からのもらい錆びもありますし、使用環境によっては酸化被膜が傷つけられるなど自ら錆びてしまうこともあります。
ステンレスは錆びないのではなく、あくまで錆びにくい金属にすぎません。
ドイツのFissler(フィスラー)やZWILLING(ツヴィリング)、アメリカのVita Craft(ビタクラフト)など高価なステンレス製の調理器具セットも、大切に扱うことで紛れもなく一生ものになりますので、その価格も納得に値します。
調理器具もシンクも、ステンレス製品を使ったあとは「しっかり洗い・しっかりすすぎ・しっかり乾燥」を日頃から心掛けましょう。
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