日本を代表する調味料「醤油」。私たち日本人の舌に馴染んだ調味料で、何らかの形でほぼ毎日口にしてますよね。
日本農林規格(JAS規格)では醤油の種類を、濃口醤油・薄口醤油・たまり醤油・再仕込み醤油(さいしこみしょうゆ)・白醤油の5つに分類しています。
なかでも、一般的にご家庭で常備されている醤油といえば、色の濃い「濃口醤油」となるのではないでしょうか。
濃口醤油に続いてよく見聞きするのが色の薄い「薄口醤油」。こちらは関西地方を中心に広く使われている醤油ですが、全国的には常備されていないご家庭も多いことでしょう。
とはいえ、料理本や人気のレシピサイトでは薄口醤油を使った料理が多く紹介されていますよね。
実際のところ、濃口醤油と薄口醤油にどんな違いがあるのでしょう?。
今回は、濃口醤油と薄口醤油の違い、使い分ける必要や理由、代用する場合の方法など広く探っていきたいと思います。
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濃口醤油と薄口醤油の違い!
ズバリ!、濃口醤油と薄口醤油の主な違いは4つ。
色合い
香り
風味
塩分濃度
なかでも、色合い(濃淡)の違いと塩分濃度の違いを簡単に表すと、
・濃口醤油は、色が濃くて塩分濃度が高い
・薄口醤油は、色が薄くて塩分濃度が低い
色の濃淡から受けるイメージと、塩分濃度が相反するのがポイントです。
なぜそうなるのか?その理由も含め、濃口醤油と薄口醤油の違いを詳しく探っていきましょう。
濃口醤油とは?
醤油のなかで、濃口醤油はもっともポピュラーな種類であり、国内の醤油生産量の約8割を占めることからも、醤油といえば濃口醤油を指します。
濃口醤油の発祥は江戸時代初期の関東地方ですが、現在は日本に限らず世界100国以上に広まり愛される調味料となっています。
濃口醤油の特徴
・色は濃く明るい赤褐色
・強い香りが料理素材の生臭さを消す
・塩味だけなくうま味・甘味・酸味・苦味も
・塩分濃度は約16%
濃口醤油の原材料と成分
濃口醤油の主な原材料は大豆・小麦・食塩ですが、商品ラベルに表示されなくても「麹菌」が醤油作りの隠れた主役でもあります。
醤油の成分構成は、約7割が水分で、残り3割にたんぱく質・炭水化物・灰分が含まれます。
大豆のたんぱく質がうま味成分アミノ酸へと分解され、小麦粉の炭水化物(でんぷん)が甘味や香りの元となるブドウ糖へ分解されます。
さらに醤油が醸造される間に、外部から雑菌を守ることに欠かせないのが食塩です。
ちなみに、料理本やレシピサイトで「醤油」とされるのは、一般的にはこの濃口醤油を指しています。
薄口醤油とは?
ちなみにですが、薄口醤油は本来「淡口醤油」と表記するのが正しいのだとか。
薄口醤油(淡口醤油)の発祥地は現在の兵庫県たつの市とされ、そこから京都へと伝わり、主に関西地方で使われるようになりました。
素材の色合いを活かすために、あえて淡色に醸造される調理用の醤油です。
薄口醤油の特徴
・色が薄い(淡い)
・香りや風味もやわらかい
・料理素材の色合い味わいが生きる
・塩分濃度は約18%
濃口醤油との大きな違いは、色は薄い(淡い)のに塩分濃度が高いという、見た目と相反する点でしょう。
薄口醤油の原材料と成分
薄口醤油の成分構成も濃口醤油と同じく、たんぱく質・炭水化物・灰分ですが、原材料には大豆と小麦に加え、米が使われています。
薄口醤油の特徴の1つである色を薄く(淡く)仕上げるために、あえて塩分濃度を高めにし、醸造する期間を短くしています。
発酵と熟成を抑えることで、色が薄くても塩味が強く、やわらかな風味のの醤油になります。
製造工程の仕上げに米を甘酒にして、商品によっては水飴を加えて味に丸みを持たせるのも特徴ですね。
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関東は濃口醤油、関西では薄口醤油が広まった理由!
関東は濃口醤油、関西では薄口醤油が好まれ広まったのには理由があります。
関東では、鰯や秋刀魚、カツオなど匂いに癖のある青魚などが食材して多く用いられいたので、醤油のうま味と生臭さを消す強い香りの濃口醤油が合っていたといえます。
対して、現在の兵庫県たつの市を発祥(1660年代)とする薄口醤油は、京都へ伝わり関西地方で広く好まれるようになります。
京都の料理は、昆布出汁を多く使い食材の風味を重視する傾向が強いことから、塩味はありながらも、香りや風味がやわらかな醤油が求められたのです。
お馴染みの「うどん」を例にしても、関東・関西、それぞれ出張などで行き来される方やどちらも生活された方なら違いを実感されていることでしょう。
関東のうどんの汁は色が濃い
関西のうどんの汁は色が薄い
これは出汁の取り方の違いと、合わせる醤油の違いから。
関東のうどんの多くは鰹だし → 出汁の風味が強い →
香りが強い濃口醤油が合う
関西の多くは昆布だし → 出汁の風味が繊細 →
素材の風味が生きる薄口醤油が合う
濃口醤油と薄口醤油を使い分ける方法
料理本やレシピサイトに「薄口醤油」と書かれていると、薄口醤油を使うべきとは思うものの、実際には常備してもいないし、慣れていないとなかなか使い分けることができないものです。
とりあえず濃口醤油が「普通の醤油」であって、オールマイティにどんな料理にも使えてしまいますしね。
それでも、やっぱり上手に使い分けることができれば、料理が格段においしく作ることができます。
濃口醤油と薄口醤油の使い分けを大雑把に表現すれば、
・関東に伝わる料理には濃口醤油
・関西に伝わる料理には薄口醤油
どちらの地方の料理を作るかで、使い分けが必要になってきます。
繰り返しになりますが、
濃口醤油は塩分濃度は低めですが、醤油特有のうま味成分を多く含み香りも強いので、料理によっては素材の風味や色を損ねてしまいます。
薄口醤油はうま味成分や香りが抑えられる反面、塩分濃度は高め。
素材の風味や味を生かしたい場合は、薄口醤油の方が使いやすいのです。
濃口醤油と薄口醤油、具体的に使い分ける方法を見ていきましょう。
濃口醤油が向いている料理の例
濃口醤油とは、どんな料理にも使える万能な醤油ともいえます。
メーカーや作り手によって味わいは様々ですが、濃いめの味付けの関東風の煮物を筆頭に、素材の色味に拘らなければ料理全般に広く使うことができます。
肉じゃが
魚の煮付け
たぬきうどん
おでん
きんぴらごぼう
冷や奴
すき焼き
焼肉のタレ
チャーハン
豚の角煮
蕎麦つゆ
薄口醤油が向いている料理の例
薄口醤油は色味が薄く、香りやコクも控えめなので、素材の色味をきれいに透き通った感じに仕上げたい料理に使います。
つまり、醤油の塩味はつけたいけれど、料理を茶色っぽくしたくない場合に適しています。
うどんの出汁
お吸い物
茶碗蒸し
白身魚の煮物
おせち料理の煮物
卵焼き
炊き込みご飯
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薄口醤油を濃口醤油で代用する場合は?!
料理本やレシピサイトで「薄口醤油」と書かれている場合に、ご家庭に常備される濃口醤油で代用することができるのか?。
結論からいえば、薄口醤油を濃口醤油で代用することはできます!。
ただし、薄口醤油の分量をすべて濃口醤油で代用すれば色が濃すぎて、料理の見栄えが悪くなってしまいますよね。
ここでは、薄口醤油の分量の半分を濃口醤油を使い、残りの塩分は塩で補う形での代用を紹介します。
薄口醤油と濃口醤油、厳密にいうと塩分濃度が2%ほど違いますが、ここでは誤差の範囲と考え、料理の色味や風味を一番に考えています。
薄口醤油大さじ1杯を濃口醤油で代用する場合は?
まず、醤油小さじ1杯、大さじ1杯に何グラムの塩分が含まれているかというと
・醤油小さじ1杯:塩分1g
・醤油大さじ1杯:塩分3g
それでは、薄口醤油大さじ1杯を濃口醤油で代用する場合を考えていきます。
薄口醤油大さじ1杯(塩分3g)≒
濃口醤1/2杯(塩分1.5g)+
食塩1.5g(小さじ1/4)
ちなみに食塩1.5g(小さじ1/4)とは、単純に小さじすり切り1杯の半分の半分ですから、計りを使うのが面倒であれば「小さじの先にちょっと」という感じでOK。
薄口醤油小さじ1杯を濃口醤油で代用する場合は?
先の例を踏襲して、薄口醤油小さじ1杯(塩分1g)を濃口醤油で代用するなら
薄口醤油小さじ1杯(塩分1g)≒
濃口醤油小さじ1/2杯(0.5g)+
食塩0.5g(ほんのちょっと)
ちなみに食塩0.5gの量のイメージは、親指と人差し指2本の指先で一摘まみしたくらいの量です。
これらは、薄口醤油で調理した料理の色に近づけるため、色味の濃い濃口醤油を半分くらいにして、薄口醤油の塩分濃度に近づけるために塩を足すというイメージです。
とはいえ、濃口醤油と薄口醤油は同じ醤油でも作られ方から違いますからやはり別物で、代用では同じ味わいにはなりません。
薄口醤油で料理するとどんな味わいになるのか、その違いを知るには、実際に試される他ありません。
薄口醤油を1本常備することで、料理の幅がぐっと広がるのではないでしょうか。
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濃口醤油・薄口醤油以外の醤油の種類
これまで、日本で使わている醤油の約95%を占めている濃口醤油と薄口醤油の違いにスポットを当て紹介してきました。
簡単な形になりますが、日本農林規格(JAS規格)で分類されている種類、たまり醤油・再仕込み醤油・白醤油についても触れておきたいと思います。
どれも、日本での使用量の約5%ほどのレアな種類の醤油ではありますが、それぞれ個性豊かな醤油です。
たまり醤油
たまり醤油は、ほぼ大豆だけで作られている醤油。
色が濃くとろみがあるのが特徴で、味わいはやや甘く濃厚、味噌のような強い香りがします。
愛知県など中部地方でよく使われる種類で、餅やお煎餅につけて焼いたり、そのうま味から豆腐料理や卵料理、魚の照り焼きやすき焼きなどにも適しています。
中国地方や九州地方では、刺身醤油として使われることもあります。九州の方では、筑前煮(がめ煮)をたまり醤油で味付けされています。
たまり醤油の生産量は、醤油全体の約2%。
塩分濃度は濃口醤油と同じ16%。
白醤油
たまり醤油が大豆に対し、蒸した小麦をメインに少量の大豆を炒って加えて作られるのが白醤油。
薄口醤油以上に発酵も低温で短期間に抑えられいて、「白」というだけあって、琥珀色に透き通った見た目からは醤油とはわからないほどです。
白醤油も、愛知県が発祥地。
非常にレアな醤油の種類で、生産量は醤油全体の1%にも足りません。
高級懐石料理を提供する料亭では「隠し味」に白醤油が使われたりするように、白醤油は素材の味わい・色味を生かすに使い勝手のいい醤油です。
塩分濃度は薄口醤油と同じ18%。
再仕込み醤油
再仕込み醤油は、その名の通り再度仕込む醤油で、2回醸造を繰り返しています。
2回の醸造によって、色は濃くなりとろみを帯びた濃厚な味わいが特徴で、甘露醤油や刺身醤油ともいわれますが、お値段は普通の濃口醤油の2倍~5倍とかなり高価な醤油です。
お刺身やお寿司に使うと、その風味を存分に感じることができます。
例えば、冷奴(お豆腐)や目玉焼きに一般的な濃口醤油を掛けると、さらっとし過ぎて醤油がどんどんお皿に流れ落ちてしまいますよね。
再仕込み醤油なら、お刺身や冷奴、目玉焼きなど食材に絡みつくように馴染んでくれるのです。
再仕込み醤油の発祥は、山口県柳井市とされています。
国内生産量は、醤油全体の約1%ほど。
塩分濃度は約15%です。
まとめ
濃口醤油と薄口醤油の大きな違い、色の濃淡と塩分濃度。
濃口・薄口というのは色の濃淡を表す表現で、塩分濃度は見たと反比例するように、むしろ薄口醤油の方が濃口醤油より高いのです。
使い分ける方法について、記事内では関東と関西の料理で分けてみましたが、それぞれ向いている料理が異なります。
濃口醤油:醤油の風味・うま味を生かす料理
薄口醤油:素材の風味・色合いを生かす料理
薄口醤油を濃口醤油で代用する方法も紹介しましたが、あくまで、薄口醤油で調理した料理の色合いに近づけるための代用方法で、同じ味わいにはなり得ません。
基本的に、濃口醤油があればだいたいの料理は作れますが、薄口醤油を1本常備することで料理の幅がぐっと広がるのではないでしょうか。
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