今回のテーマは、私たち日本人にとってとても馴染み深いお魚「鮭」、とりわけその「旬の時期」について。
スーパーでも魚屋さんでも、鮭はいつでも並んでいることもあって、みなさんが「鮭の旬の時期」を意識されることは少ないかもしれません。
先日も、某回転寿司チェーンの限定メニューに北海道産「秋鮭」を見かけましたが、鮭の旬の時期は本来「秋」とされています。
北海道のお土産で知られる「熊が鮭を咥えた」木の彫り物は、まさに冬眠前の熊が秋に「産卵のために川を遡上してきた鮭」を捕まえているシーンです。
秋の時期に旬を迎えた鮭は「秋鮭(アキサケ)」や「秋味(アキアジ)」などと呼ばれ、私たちの食を楽しませてくれますが、同じ鮭にも旬の時期を「春」とするものがあります。
それが、「時鮭(トキサケ)」や「時不知(トキシラズ)」と呼ばれる鮭。
種類としては、どちらも日本人が昔から「鮭」として馴染んできた「白鮭(シロザケ)」ではありますが、同じ白鮭でも春と秋、獲られる時期で呼び名も変われば、それぞれ違った美味しさを楽しむことができます。
春の鮭と秋の鮭、どちらが美味しいと思うかは人それぞれ。みなさんは、どちらの鮭がお好みでしょう。
今回は、鮭の旬の時期、春と秋で異なる美味しさの違いについて、それぞれの特徴をわかりやすく紹介していきたいと思います。
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漁期の旬が秋の「秋鮭」!
鮭は本来、秋を旬の時期とする魚で、スーパーや町の魚屋さんでは「秋鮭」や「秋味」と呼び、お手頃な価格で出回るようになります。
兎角、魚には「味の旬」と「漁期の旬」があるように、1年に2回の旬の時期を迎えるといわれますが、秋はまさに鮭の「漁期の旬」です。
北海道を中心に東北地方などの河川で生まれた鮭の稚魚は、海へ出たあと2年~8年もの長い期間、冷たい北洋を回遊しながら最大で体長1mにもなる大きさまで成長し、9月~11月の秋の時期になると、産卵期を迎えた多くの鮭が「母川回帰」の習性で生まれ故郷の川へ戻るために、日本近海や日本沿岸へやってきます。
つまり、鮭漁としての漁期は秋であり、まさに秋が旬の「秋鮭」となるわけです。
産卵間近な秋鮭の身は、脂がやや少なく、どんな料理で食べても美味しい。
さらに秋鮭ならではの特徴は、メスのお腹には「いくら」になる前の「筋子」が、オスのお腹には栄養満点の「白子」が入っていることでしょう。
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味の旬なら春の「時鮭」!
鮭の「漁期の旬」が秋ならば、鮭の「味の旬」は春~初夏の時期。
先の「秋鮭」とは、日本の川で産卵され生まれた稚魚が、冷たい北洋を回遊しながら成長し、自身の産卵期を迎えた秋に生まれ故郷の川へと戻るため、日本近海・日本沿岸へ戻ってきた鮭でした。
一方、春~初夏が旬となる「時鮭」とは、その故郷はロシア北部のアムール川といわれ、北洋を回遊中、ちょうど北海道沿岸まで南下してきたところを漁獲された鮭。
本来は「秋に戻ってくる」はずの鮭が、春~初夏に「時を知らずに戻ってきた」として、「時鮭(トキサケ)」や「時不知(トキシラズ)」と呼ばれています。
これから産卵期に入っていく春~初夏にかけて漁獲される「時鮭」の身は、たっぷりと脂がのりとても柔らかい食感が特徴。
時鮭は希少価値が高く、お値段も秋鮭の2倍~3倍はする高級品として知られています。
北海道や東北地方の沿岸地域へ旅行した際、もしも土産物ショップや地元の魚屋さんで「時鮭」がお買い得価格で紹介されていたら、間違いなく「買い」ですよ!。
春が旬の時鮭!脂がのったハラスが最高に美味!
春が旬の「時鮭」や「時不知」は、蓄えた栄養がいくらになる前の「筋子」や「白子」に奪われる前の時期なので、その身はたっぷりと脂がのって正しくジューシー。
なかでも「ハラス」と呼ばれる部位は、とくに脂がのって最高に美味しいといわれます。
回転すしのメニューでも紹介される「ハラス」とは、鮭の内臓まわりの脂がよくのっている部位で、鮪でいえば「大トロ」に相当します。
脂がやや少ないとされる「秋鮭」でもハラスは人気の部位ですが、時鮭のハラスには秋鮭の3倍もの脂がのっているといわれるのですから驚きです。
しかも時鮭にのった脂は、しつこい感じが全くなく、良質な脂の旨味を堪能できるというシロモノ。
牛肉に例えたら、A5ランクの霜降り肉のイメージでしょうか。
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白鮭以外の鮭の旬の時期や特徴は?
私たちが鮭と呼んでいるのは、秋に旬を迎える「秋鮭」や春~初夏が旬の「時鮭」に代表される「白鮭」の他にも、銀鮭や紅鮭、キングサーモンやお弁当によく用いられるサーモントラウトなど色々な種類が含まれます。
回転すしでは、白鮭の「鮭」と「サーモン」と呼ばれるキングサーモンの扱いはだいぶ違う扱いになっています。
秋鮭や時鮭に代表される白鮭以外の鮭の仲間は、日本近海ではほとんど漁獲量がなく、主に輸入や養殖されたものとはなりますが、やはり旬の時期はそれぞれ違いがあります。
銀鮭
「銀鮭」と漢字表記すると、あたかも日本由来の種類に思えますが、実は日本近海ではほとんど獲ることができない種類の鮭です。
現在流通している銀鮭の多くはチリ産など輸入物で、国産物は僅かに、鳥取や宮城を中心に養殖されたものです。
銀鮭の旬の時期は、輸入物も養殖物も8月~10月頃と、夏~秋にかけての時期になります。
脂もよくのり、焼き物や煮物、鍋料理からスープまで、何にでも合う鮭ですです。
紅鮭
紅鮭も日本由来の種類に思える呼ばれ方ですが、銀鮭同様に日本近海では取れない鮭で、ほとんどがロシアやアラスカなど北洋の国からの輸入物です。
紅鮭の名前の由来は、産卵期にそのカラダを真っ赤にすることから。
紅鮭の旬の時期は、夏真っ只中の6月~8月頃です。
適度にのった脂と鮮やかな身の色など「見栄えのよさ」から、紅鮭は「スモークサーモン」の材料として重宝されています。
焼き鮭など、食卓でお馴染みの料理にも使われます。
キングサーモン
キングサーモンは別名「ますのすけ」とも呼ばれ、ほとんどがロシアから輸入される鮭ですが、北海道の一部でも漁獲されます。
旬は4月~6月と、春~初夏にかけての時期。
特徴はたっぷり脂がのったトロッとした舌ざわりで、現在では「サーモン」として回転すしでは大人気のネタとなっています。
その昔は、生の鮭には「アニサキス」という寄生虫が多くつくということで、寿司ネタにキングサーモンが生で使われることがありませんでした。
しかし、アニサキスは「-20℃以下で24時間以上冷凍すると死滅する」という性質が、冷凍輸入されるキングサーモンが寿司ネタにぴったり当て嵌まり大ヒットしたのです。
ちなみに筆者は、イカの刺身についたアニサキスによる食中毒「胃アニキサス症」に罹り、病院の胃カメラでアニキサスを取り除く処置を受けた苦い経験があります。
その痛みは半端ありませんが、病院の先生からも「近海もので新鮮だからこそです。冷凍された魚貝類ではアニサキスは生きられませんから」と仰っていたのを思い出します。
回転すしのサーモンは、みな冷凍輸入されたキングサーモンですから、どうぞご安心を。
サーモントラウト
サーモントラウトは、コンビニの「鮭弁当」に鮭として使われることが多いです。
厳密にいうと鮭ではなく、鱒(マス)の仲間に入る魚で、標準和名では「ニジマス」となることもあり、一時期は「サーモントラウトを鮭やサーモンとして表示するのは如何なものか」と取り上げられたこともありました。
脂も鮭に劣りませんし、お弁当用だけでなく、先のキングサーモンと同様に寿司ネタに用いられるくらいですから、鮭と呼ぶことにそう目くじらをたてなくてもいいと(個人的には)思います。
サーモントラウトは、じつは海面養殖用に人工的に作られた品種。
養殖ならではで、味も常に一定で、特別な旬の時期もないといわれています。
まとめ
日本近海で獲れる白鮭をはじめ、主にロシアなどからの輸入物である紅鮭や銀鮭、キングサーモンなど様々な鮭の種類を合わせると、世界中の鮭の漁獲量のなんと1/3もの鮭が日本で消費されているという驚くべき事実があります。
兎にも角にも、私たち日本人は「鮭好き」なことがわかります。
魚には「味の旬」と「漁期の旬」の、1年に2回の旬があるとされています。
鮭に例えると、たくさん獲れる漁期の旬は「秋鮭(アキサケ)」や「秋味(アキアジ)」に代表される秋であり、味の旬は「時鮭(トキサケ)」や「時不知(トキシラズ)」が代表される春~初夏となるでしょう。
鮭の旬の時期といえば秋。
その鮭は「秋鮭(アキサケ」「秋味(アキアジ)」と呼ばれ、サンマ同様「秋の味覚」として楽しませてくれるモノです。
一方、今回紹介した「時鮭(トキサケ)」「時不知(トキシラズ)」を思えば、間違いなく春も鮭の旬の時期といえますね。
秋の「秋鮭」春の「時鮭」と覚えておくといいかもしれませんね。
どちらが美味しいと思うかは、人それぞれ。
今回は、筆者好みで脂がのった春の「時鮭」を推した感がありますが、もちろん身が締まった「秋鮭」が好きという人もいるでしょうから、こればかりは決められません。