「たぬきそば」に入る具材と聞いて、あなたは「揚げ玉(天かす)」と「油揚げ」どちらを思い浮かべますか?。
これは、あなたが関東と関西どちらの出身者かがわかるほど、関西と関東の食文化の違いがよく表されている質問の1つです。
関東で「たぬきそば」といえば、具材に「揚げ玉(天かす)」が入った蕎麦のことであり、一方の関西の「たぬきそば」には、大きな「油揚げ」がのっています。
関東の人からするれば、関西の油揚げがのった蕎麦に「それって、きつねそばでしょ?!」と思いますよね。
しかし、関西の人からすれば「きつねそば?、何それ?」となるのです。
実際に、関西の多くの蕎麦・うどん店では「きつねそば」じたいメニューに存在しないといいます。
それなら「きつねうどんに入る具材は?」と聞くと、これは関西も関東も同じく「油揚げ」がのったうどんで、そこに違いはないということ。
関西と関東の「たぬきそば」の違いや、関西に「きつねそば」がない理由には様々な説がありますが、どうやら、油揚げがのったうどん「きつねうどん」が基本となって、そこから関西と関東で違う「たぬき」や「きつね」の蕎麦やうどんに変化していったようですね。
今回のテーマは、「たぬきそば」関東と関西の違い!関西に「きつねそば」がない理由は?。
まずは、関西と関東の違いがない「きつねうどん」の発祥から探ってみましょう。
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関西と関東の違いがない「きつねうどん」
関西と関西の蕎麦・うどんの「たぬき」と「きつね」の違いを比較した中で、ほぼ同じと言っていいのが「きつねうどん」。
まずは、「きつねうどん」が生まれた由来を手掛かりに探っていきましょう。
「きつねうどん」は関西生まれ!
「きつねうどん」の発祥を紐解くと、1893年(明治26年)創業の大阪は船場にある「うさみ亭マツバヤ」の初代店主、宇佐美要太郎氏が提供した「こんこんうどん」に由来するとされています。
この「こんこんうどん」とは、かけうどんに甘辛く煮た油揚げを別皿で添えたもので、寿司屋で修行していた店主が「いなり寿司」をヒントに生み出されたメニュー。
その後、お客の中で油揚げを直接うどんにのせて食べるスタイルが流行っているのを見た店主は、はじめからうどんに油揚げをのせて提供するスタイルへとアレンジしたのです。
それはいつしか、「きつねうどん」と呼ばれるようになります。
このことは、フリー百科事典「Wikipedia」にも紹介されています。
創業者・宇佐美要太郎が、奉公先の寿司屋が廃業したのを機に、1893年(明治26年)にうどん店「松葉屋本舗」を開店。
当初、うどんの付け合わせとして、稲荷寿司用の甘辛く煮た油揚げを別皿にして出していた。しかし、油揚げをそのままうどんの中に入れて食べる客が多かったため、うどんに油揚げをのせて一緒に出す事にした。これがきつねうどんの元祖とされる。
「きつねうどん」の発祥の地となる、大阪の船場は古く商業の町。
商人たちの口伝えで、大きな油揚げがのった関西発祥の「きつねうどん」は全国へと広がり、関西と関東どちらも違わず「きつねうどん」と呼ばれるようになったのです。
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「たぬきそば」関西と関東の違い!
それでは、今回のテーマ「たぬきそば」関東と関西の違い!。
関西の大阪・船場発祥の「きつねうどん」をベースに、関西と関東の「たぬきそば」に違いが生まれたストーリーを見ていきましょう。
関東の「たぬきそば」
「きつねうどん」の由来が関西なら、「たぬきそば」の由来は関東にあるとされています。
関東で「たぬき」と名のつく、「たぬきそば」や「たぬきうどん」が生まれたのは江戸時代の終わり頃。
蕎麦の具材にのっていた「かき揚げ」に、コストダウンが図られたものでしょう。
イカなどの「種」が抜かれていき、いつしか揚げ玉(天かす)だけになることで「種抜き」→「た抜き」→「たぬき」と揶揄され、「たぬきそば」や「たぬきうどん」と呼ばれるようになったという説が1つ。
その揚げ玉(天かす)も、関東では天ぷらをごま油で揚げていたことから、どうしても黒っぽくなりやすい。
その濃く茶色がかった揚げ玉(天かす)の見た目から「たぬき」が連想されたという説にも頷けます。
いずれの説にしても、昔から「きつねとたぬきの化かし合い」といわれ、ライバル的存在のきつねとたぬき。
関東では、のせる具材を「きつね」の油揚げから揚げ玉(天かす)に化かすことで、「たぬきそば」や「たぬきうどん」が生まれたのです。
しかし、こんな駄洒落のような関東発祥の「たぬきそば」のスタイルが、そのまま関西へ伝わることはありませんでした。
関西の「たぬきそば」
関東の「たぬきそば」は、ベースとなった関西発祥の「きつねうどん」の油揚げを揚げ玉(天かす)に変化させた蕎麦であるのに対し、関西の「たぬきそば」は、「きつねうどん」から麺を蕎麦からうどんへ変えたもの。
関西では「きつねうどん」のせる具材「油揚げ」はそのままに、麺を蕎麦に化かすことで「たぬきそば」が生まれたのです。
たぬきときつねをライバル視した点は同じですが、違いは化かしたものが「関東は具材」で「関西は麺」だったのです。
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「きつねそば」関西と関東の違い!
ここまで何度も紹介してきたように、関東では蕎麦もうどんも油揚げや揚げ玉(天かす)など、具材の変化で「たぬき」や「きつね」と呼び方が変わります。
当然、関東の「きつねそば」とは油揚げがのった蕎麦ということになります。
関西に「きつねそば」がない理由!
一方の関西では、一般的に「きつねそば」じたいが、蕎麦・うどん店のメニューに存在しないといわれます。
なぜなら、関東で「きつねそば」と呼ばれる「蕎麦+油揚げ」の組み合わせは、関西では既に「たぬきそば」に位置づけされているからです。
「たぬきうどん」関西と関東の違い!
ここまで、関西と関東の「たぬき」や「きつね」の蕎麦やうどんの違いを探ってきましたが、この「たぬきうどん」こそ、関西と関東の違いが興味深く面白い。
関東の「たぬきうどん」
関東では蕎麦もうどんも、油揚げや揚げ玉(天かす)など、具材の変化で「たぬき」や「きつね」と呼び方が変わる。
・油揚げをのせれば、「きつねうどん」であり「きつねそば」に。
・揚げ玉(天かす)を入れれば、「たぬきうどん」であり「たぬきそば」に。
つまり、関東では具材の変化で呼び方がかわることから、この4種類のメニューがしっかり存在します。
関西の「たぬきうどん」
一方の関西では、一般的に「きつねそば」だけでなく「たぬきうどん」も、蕎麦・うどん店のメニューに存在しないことが多い。
たしかに、関西でも「揚げ玉(天かす)」は、うどんや蕎麦に入れる定番の具材の1つではあります。
但し、関西では「揚げ玉」のことを「天かす」と呼ぶことから、「天かすうどん」や「天かすそば」と呼ばれています。
「天かす」とは、天ぷらを揚げたときに出る「揚げかす」のこと。
もはや「捨ててもいいもの」という位置づけなのでしょうか、「天かす」はテーブルサービスになっていることも多く、わざわざメニューに掲載していない蕎麦・うどん店も多いのです。
関西では「ハイカラうどん」
関西でも大正時代ころから、天かすをうどんや蕎麦の具材に入れるようになったとされています。
しかし、関西人からすると「捨ててもいいもの」である「天かす」です。
天かすをうどんや蕎麦に入れて食べるなんて、「関東の人はハイカラやな」と皮肉り、「ハイカラうどん」や「ハイカラそば」と呼ぶようになったとされるのは、大変興味深い点でもあります。
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京都の「きつねうどん」と「たぬきうどん」
これまで、「たぬき」や「きつね」の関西と関東の違いを比較してきましたが、大阪を中心とした関西のうどん・蕎麦文化の中でも、京都には独特の違いがあるといいます。
京都の「きつねうどん」
関西の「きつねうどん」として一括りにできないのが、京都の「きつねうどん」。
京都の「きつねうどん」は、油揚げを2㎝幅に短冊切りにして、九条ねぎと一緒にうどんにのせたもの。
細めんのうどんと出汁、具材がバランスよく合わさり「品のよさ」が感じられます。
それは、古くは公家文化の中「上品な食べ方」が求められたことや、舞妓さんたちが大きな口を開け油揚げにかぶりつかずに済むように生み出された「きつねうどん」の姿。
京都の「たぬきうどん」
そんな品のいい京都の「きつねうどん」に、ドロッとした「あん」をかけたのが京都の「たぬきうどん」。
きつねが「ドロン」と化けてたぬきになったという洒落も加わった呼び方ですが、もともと冬の底冷えが厳しい京都では、熱を逃さないように「あん」がかけられる調理法が多く用いられています。
あんかけは湯気が出ず、熱くなさそうでとても熱い。そんな騙された感じ、化かす意味から「たぬき」と呼ばれるようになったのではという説もあります。
まとめ
今回は、「たぬきそば」関東と関西の違い!関西に「きつねそば」がない理由は? をテーマに、関西と関東で違う蕎麦やうどんの「たぬき」や「きつね」を比較する形で紹介してきました。
ややこしい部分もあったと思うので、最後におさらいの意味で一覧表にして比べてみましょう。
・きつねうどんは「油揚げ」がのったうどんで、関東と関西に違いがない。
・関東のたぬきそばは「揚げ玉入りの蕎麦」。関西のたぬき蕎麦は「油揚げがのった蕎麦」。
・関西は一般的に「きつねそば」はメニューにない。
・関東のたぬきうどんは揚げ玉入りのうどんで、関西では「天かす」がテーブルサービスになっていることも多く、「ハイカラうどん」と呼ばれる。
ところで記事冒頭の質問、「たぬきそば」に入る具材と聞いて、あなたは「揚げ玉(天かす)」と「油揚げ」どちらを思い浮かべましたか?。
私は生まれも育ちも関東なので、「たぬきそば」=揚げ玉が入った蕎麦でしかないですし、油揚げがのった蕎麦=「きつねそば」でしかありません。
関西へ出張した際に、いつもの調子で「たぬきそば」と注文しては、出てきた蕎麦が油揚げがのった関東でいう「きつねそば」だったなんて失敗は何度もあります(苦笑)。
逆に、先日立ち寄った大阪のうどん店では「天かす」がテーブルサービスにあったので、冷やしうどんを注文して思い切り天かす入れ「冷やしたぬきうどん」を楽しみました。
大阪では「冷やし天かすうどん」や「冷やしハイカラうどん」と呼ばれるものでしょうか。
長い社会人生活。関西と関西の食文化の違いなども、出張の楽しみだったりしますよね(笑)。
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