目には青葉 山ほととぎす 初鰹
江戸中期の俳人・山口素堂(1642~1716)が詠んだ俳句であり、江戸っ子の間では初夏に出回る初鰹を食べることが粋とされ、値の張る初鰹をこぞって食べていたのだとか。
私的に鰹というと昔、栃木で鮪のお刺身を得意とする有名な某鮮魚店を営んでいた叔父の好物が、意外にも鰹のお刺身だったのを思い出します(苦笑)。
青魚の筆頭とも呼べる鰹は、高たんぱく質で低カロリー、DHAやEPA、鉄分やナイアシンなどの栄養素が豊富に含まれ、価格も鮪と比べて低価格。
さらに、鰹には初鰹と戻り鰹と呼ばれるように、美味しい旬の時期が2回あるのも特徴です。
今回は、初鰹と戻り鰹はどっちが美味しいのか、旬の時期や味の違い、おすすめの食べ方などを徹底比較していきたいと思います。
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鰹の初鰹と戻り鰹とは?
冒頭で紹介した俳句「目には青葉 山ほととぎす 初鰹」の他、「女房を質に入れても初鰹」と詠まれた川柳もあるように、江戸時代ころの初鰹は1本2~3両、現在のお金に換算すると1本約40万円になるといいます。
そこまでして初鰹を…
初鰹とは?
鰹は太平洋・大西洋・インド洋などで大きな群れを成して泳いでいる回遊魚で、渡り鳥のように時期・季節によって泳ぐ場所を移動していきますが、春頃になると温かい黒潮にのって日本近海へ昇ってきます。
黒潮は九州南海から日本列島に沿って東北の三陸沖にかけて潮流があるので、餌となるイワシなどを求め
2月~3月に九州沖
3月~4月に四国・紀州沖
4月~6月に伊豆・房総沖
と徐々に北上していき、この春~初夏にかけて水揚げされる鰹が初鰹です。
新しい年を迎えて初めて水揚げされた鰹であることから初鰹と呼ばれ、のぼり鰹やはしり鰹とも呼ばれることもあります。
戻り鰹とは?
先の初鰹は、餌を求め黒潮にのって北上し、春~初夏の時期に水揚げされた鰹。
餌を求めて黒潮にのり北海道沖まで北上した鰹も、9月頃になるとこんどは産卵のため親潮にのってUターンするように南下しはじめます。
このUターンをはじめた鰹を、9月~10月頃に水揚するのが戻り鰹。
親潮とは千島列島に沿って南下し日本の東まで達する寒流で、親潮の名前の由来は、栄養塩が豊富で魚類や海藻類が育てる親にあたるからといわれます。
初鰹として春~初夏の時期に水揚げされずに、餌をたっぷり食べて一段と大きく成長しながら北上をしたのちUターンしてきた戻り鰹は、脂がのってとても美味しいことからトロ鰹とも呼ばれています。
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初鰹と戻り鰹の味の違い
鰹は、太平洋・大西洋・インド洋などで大きな群れを成して泳いでいる回遊魚で、渡り鳥のように時期・季節によって泳ぐ場所を移動していきます。
黒潮にのって餌を求めて北上していく過程で水揚げされる鰹が初鰹であるのに対し、東北の三陸沖さらに北海道沖からUターンして南下する過程で水揚げされる鰹が戻り鰹。
初鰹と戻り鰹の呼び名の違いは水揚げされる時期と成長過程の違いであって、鰹の種類が違うわけではありません。
初鰹の味の特徴は?
餌を求めて黒潮にのり北上を続けている過程て水揚げされた初鰹は、まだ脂ののりも少ないので、あっさりした味わいが特徴。
魚肉は赤々としていて透明感がある色合いで、食感もプリっとした若い歯ごたえです。
戻り鰹の味の特徴は?
9月頃になり、三陸沖や北海道沖から南下しはじめたところを水揚げされた戻り鰹は、産卵に向け餌をたっぷり食べているので、しっかり脂がのった濃厚な味わいが特徴。
戻り鰹の脂肪分は初鰹の10倍にもなるといわれ、その食感は「もっちり」とも「こってり」とも。
江戸時代はあっさり味の初鰹が好まれていましたが、現在は脂がのった戻り鰹は秋味「トロ鰹」と呼ばれるように、とても好まれていることも納得です。
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初鰹と戻り鰹の栄養成分の違い
初鰹と戻り鰹の栄養成分の違いについて、カロリーや脂質を中心に比較してみましょう。
脂がのった戻り鰹の方が圧倒的に脂質が多く、その分エネルギー量(カロリー)も高くなっていますよね。
となれば、よりヘルシーなのは初鰹と思われがちですが、初鰹も戻り鰹も基本的にはどちらも同様に高たんぱく質で低脂肪。
注目すべきは、戻り鰹の方が良質な脂質とされる不飽和脂肪酸を多く摂れることにあります。
戻り鰹に多く含まれる不飽和脂肪酸とは?
脂質は構造の違いで飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分類されます。
・動物性の脂肪に多く、バターやラードなど常温下で固体となるのが飽和脂肪酸。
・植物性や魚類の脂肪に多く、オリーブオイルや魚の脂など常温下で液体となるのが不飽和脂肪酸。
この不飽和脂肪酸には、人のカラダでは作ることができない必須脂肪酸の一種のEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)が含まれ、それは初鰹より脂のりがいい戻り鰹の方が多く含まれているとされます。
EPAの血液サラサラ効果は、血栓をできにくくし、高脂血症を予防することで動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞を予防することに働くことが認められています。
DHAは人の脳や網膜などの神経系にたくさん含まれている栄養素であることが話題となり、DHAを豊富に含む青魚を食べると「頭の働きがよくなる」や「目がよくなる」と注目されています。
EPA・DHA、どちらもサプリメントで摂られている方も多いですよね。
戻り鰹に多く含まれているという不飽和脂肪酸には、中性脂肪やコレステロールを抑え、血栓ができることを予防する働きが期待されるもので、カラダに蓄積されるような脂肪ではないので、ダイエット中でも問題なく、より積極的に摂るべきものといえるでしょう。
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初鰹と戻り鰹の食べ方の違い
初鰹の食べ方は断然たたきがおすすめ!
初鰹の身が引き締まった食感は、火を通してしまうと硬くなりパサパサした食感になりがち。
初鰹のあっさりとした味わいを生かす食べ方は、断然たたきなどお刺身がおすすめです。
ご家庭で「藁焼き」のたたきは難しいかもしれませんが、塩をふって魚グリルやフライパンなど直火で焼き、焼き色をつけるだけでもOKです。
鰹のカルパッチョや、鰹のお刺身を醤油・みりん・料理酒の漬けダレに浸した漬け・漬け丼にして食べるのもおすすめです。
戻り鰹は生でも加熱してもおいしい!
トロ鰹とも呼ばれる戻り鰹も初鰹と同じく、まずはたたきやそのままお刺身で食べるのがおすすめです。
鰹のたたきやお刺身には、山葵ではなく生姜やニンニクが添えられていることが多いですね。生姜ニンニク醤油は、鰹特有の生臭みを消すことができることから相性抜群。
さらし玉ねぎや青じそなど薬味と一緒に食べると鰹の美味しさがより引き立ちますし、「ポン酢+マヨネーズ+七味」は食のプロたちの間では鉄板の食べ方なのだとか。
さらに、脂がのった戻り鰹はガーリックステーキや竜田揚げなど加熱調理してタルタルソースを掛けて食べてもおいしいですね。
まとめ
春~初夏にかけて水揚げされる「初鰹」と秋に水揚げされる「戻り鰹」。季節によってここまで味や栄養成分に違いがある魚も珍しいかもしれません。
あっさりした味が特徴の初鰹と、しっかり脂がのった濃厚な味わいが特徴の戻り鰹。
俳句「目には青葉 山ほととぎす 初鰹」の他、「女房を質に入れても初鰹」と川柳に詠まれるなど、粋な江戸っ子の間では初鰹が大人気であったようですが、筆者個人は脂がのった戻り鰹の方が好みです。
鰹のたたきやお刺身の食べ方といえば、生姜やニンニク、さらし玉ねぎや青じそなど薬味と一緒に食べるのが定番ではありますが、我が家の食べ方は記事内でも紹介した「ポン酢+たっぷりマヨネーズ+七味」がすっかり定番になっています。
ぜひお試しください!。
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