近年は、うなぎの稚魚「シラスウナギ」の生息数が激減していることで鰻の価格も高騰していますが、夏の「土用の丑の日」には、鰻を食べようという人も多いのではないでしょうか。
日常的に食べることが難しい鰻も、この日だけは奮発して食べる理由づけになり得ます。
ところで昔から、なぜか「鰻と梅干しは食べ合わせが悪い」といわれますよね。実際、鰻と梅干しの食べ合わせを避けている人も多いのではないでしょうか。
辞書には「食べ合わせとは一緒に食べると害になるもの」と記されているように、お腹を下したり、場合によっては命に係わるような食べ合わせもあるといわれます。
そこで今回は「鰻と梅干しの食べ合わせはなぜ悪い?」をメインテーマに、スイカと天ぷらなど代表的な食べ合わせの言い伝えに科学的な根拠があるのかについて、あらためて探ってみました。
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鰻と梅干しの食べ合わせは本当に悪いのか?
今回のメインテーマとなる「鰻と梅干し」だけでなく、過去の記事 >スイカとの食べ合わせ!本当にダメなものと意外と良い食べ物!< でも紹介したように、食べ合わせを少し難しい言葉に置き換えると「合食禁」となります。
合食禁
食に関する伝承の一つ。一緒に食べるときに食材の取り合わせが悪いとされる言い伝えであり、一般に消化に害を来たすとされている。平易な日本語では食べ合わせ(たべあわせ)、食い合わせ(くいあわせ)と呼ばれることが多い。
スタミナ源の鰻とすっぱい梅干し。
どちらも、食欲がおちる暑い季節にぴったりな夏バテ予防に食べたくなる食べ物です。
しかし昔からこの2つを一緒に食べると、脂っこい鰻と酸味の強い梅干しは相性が悪く、消化不良でお腹を下すとされ、悪い食べ合わせの代表格のようになってしまっています。
鰻と梅干しの食べ合わせは悪くない!理想的ないい組み合わせ?
その昔から、鰻と梅干しは食べ合わせが悪いといわれてきた理由は、脂(油)と酸の相反する組み合わせに対する云わば「イメージ」の問題からです。
鰻に豊富に含まれるビタミンB1と梅干しのクエン酸は、いずれも疲労回復に効果的な栄養素であり、夏バテ予防・スタミナUPに大きく役立ちます。
さらに、梅干しの酸味が胃酸の分泌を促すことは、脂っこい鰻の消化の助けとなり、消化不良や食後の胃もたれの軽減に働きます。
鰻と梅干しの食べ合わせは決して悪いものではなく、むしろ理想的ないい食べ合わせといって過言ではありません。
それでは、なぜ昔から鰻と梅干しの食べ合わせは悪いとされてきたのでしょうか?。
鰻と梅干しの食べ合わせはなぜ悪い?
実際には、脂っこい鰻の消化を助ける働きをもつ梅干しの組み合わせが、なぜ悪い食べ合わせとされてきたのでしょうか?。
今回のテーマの本質といえる部分ですが、その理由は諸説あります。
しかし、いずれの説も本来の食べ合わせの意味である「一緒に食べると害になるもの」とは、まったく異なる観点からはじまった言い伝えのようです。
鰻が腐っていることに気がつかない?!
鰻専門店のうな重はもちろん、スーパーや、昨今はお取り寄せグルメで購入した冷蔵の蒲焼きを温め直して食べても美味しい鰻。
これが冷蔵庫もない昔は万が一鰻が腐っていても、梅干しの強い酸味で気づかず食べてしまいかねないという、冷凍も含め十分な保存環境で流通される現代では考えづらい話ですが、これこそが鰻と梅干しの食べ合わせが悪いという説。
夏の土用の丑の日ころだと、とくに食中毒が心配な時期ですものね。
梅干しの酸味で鰻の栄養がなくなる?!
鰻の脂分から得られる栄養が、梅干しの酸味で打ち消されてしまうという説があります。
ある意味、昔の人が抱くイメージって凄いですよね。
梅干しを食べたさっぱり感で口のなかの脂っこさを和らげることが、そのままカラダの中でも起きてしまうと思ったのでしょうか。
高価で贅沢な鰻を食べ過ぎないように?!
近年、うなぎの稚魚「シラスウナギ」の生息数が激減していることで鰻の価格が高騰していますが、鰻は今も昔も高価で贅沢な食品に違いはありません。
美味しくて栄養満点な鰻ですが、脂も多くこってり感からそう沢山食べられるものでもありません。お財布事情からすれば、逆にそれがいい具合なのかもしれませんね。
それでは、鰻と一緒にさっぱりとした梅干しを食べたらどうでしょう?。
梅干しが胃酸の分泌を促し、さらに食欲が増して「もっと鰻が食べたい」となるに違いありません。
鰻と梅干しの食べ合わせとは「チョコレートを食べ過ぎると鼻血が出る?」と同じ感じで、高価で贅沢な鰻を食べ過ぎないように生まれた言い伝えとする説。
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じつは食べ合わせが悪い定番料理とは?!
鰻と梅干しの食べ合わせは、その根拠が怪しい云わばイメージ先行の言い伝え感が否めませんでしたが、ここからは科学的な根拠もある悪い食べ合わせを紹介してみたいと思います。
じつは、いつもの定番料理が意外にも悪い食べ合わせなのが驚きですが、作るとき・食べるときのポイントを一緒にお伝えしますね。
ほうれん草とベーコンの食べ合わせ
ほうれん草と組み合わせる食材の定番といえば、やはりベーコン。
基本のバターソテー(炒め)に加え、パスタ・スープ・サラダから、キッシュ風オムレツなど、ほうれん草とベーコンは相性がよく、さまざまな料理で重宝される組み合わせですよね。
しかし驚くことに、ほうれん草とベーコンの食べ合わせは意外にも悪いのだとか。
その理由は、ほうれん草に含まれる硝酸はカラダの中で亜硝酸へと変化するのですが、この亜硝酸はベーコンに含まれるタンパク質分解物と反応することで、発がん性物質を生成させることに繋がることにあります。
さらに、ほうれん草に合わせるベーコンに含まれるリン酸が、ほうれん草の鉄分やカルシウムなどを吸収することを妨げてしまうので、栄養的にもったいない面があるようです。
ほうれん草とベーコンの炒め物を作るポイント!
定番のほうれん草とベーコンのバターソテーなど炒め物を作るときは、その他ビタミン類を豊富に含むパプリカなどの野菜や、食感も楽しめるトウモロコシなど穀物などを加えましょう。
ほうれん草はさっと軽く茹でてから炒めると、亜硝酸の変化や鉄分・カルシウムの吸収が妨げられるが抑えられます。
焼き魚と漬物の食べ合わせ
焼き魚のたんぱく質が分解されたジメルアミンという物質と漬物に含まれる亜硝酸塩とが結びつくことで、ニトロソアミンと呼ばれる発がん性物質に変化するリスクが生じるといいます。
焼き魚と漬物を食べるときのポイント!
焼き魚を食べるときは、ぜひ魚の脇に添えられているレモンやすだちを搾ってかけます。
ビタミンCを加えることで、発がん性物質ニトロソアミンの発生を抑えることが期待されるのです。
大根おろしをトッピング!
その昔から、焼き魚の焦げは発がん性物質になるといわれていますが、大根おろしに含まれるリグニンと呼ばれる食物繊維には発がん性物質の生成を防ぐ作用があります。
さらに、大根おろしに含まれる消化酵素ジアスターゼが、脂がのった魚の消化を助けてくれるのです。
ランチの定番、焼き魚と漬物の組み合わせも、脇役のようなレモンやすだちなど柑橘類の搾り汁や、付け合わせの大根おろしに食べ合わせをいいものにする役割があったのですね。
天ぷらとスイカの食べ合わせ
天ぷらの油とスイカの水、昔から「水と油」というように相性が悪く食べ合わせが悪いとされてきた代表例でしょう。
しかし、その天ぷらとスイカの食べ合わせも、昨今の研究結果では一緒に食べてもなんら問題はないされています。
とはいえ、スイカのカラダを冷やす作用は胃腸を冷やすことに繋がりますので、スイカの食べ過ぎには注意する必要がありそうですね。
大根とにんじんの食べ合わせ
大根に豊富に含まれているビタミンCが、生のにんじんに含まれるアスコルビナーゼという酵素の働きで破壊されてしまうことから、よくない組み合わせとされています。
加熱調理や酢・レモンを加えて料理する!
にんじんに含まれるアスコルビナーゼは熱や酸に弱いので、加熱調理するか、酢やレモンなどを加えて料理にすれば大丈夫です。
豚や鶏と合わせた煮物や炒め物、みそ汁などにするといいですね。
また、大根とにんじんを千切りを酢で合わせたお節料理の定番「紅白なます」は生でありながら、栄養的に理にかなった一品だといえるでしょう。
サラダなら、しっかりと酢が効いたドレッシングと合わせて食べるといいですね。
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食べ合わせがいい定番の付け合わせ
たとえば「カレーにらっきょう」や「とんかつにキャベツ」など、料理の脇役的な存在の付け合わせにも、カラダにいい食べ合わせとなるように考えられています。
昔から受け継がれる食文化の知恵ですね。
とんかつと千切りキャベツは油の吸収を抑え胃腸を守る!
とんかつの付け合わせといえば、当然の如くキャベツの千切りでしょう。
とんかつ専門店では「キャベツおかわり自由」なことも珍しくありませんものね。
食物繊維を多く含むキャベツには、とんかつの油(脂)の吸収を抑制するだけでなく、キャベツに含まれるビタミンUが胃腸を優しく守る働きをするとされます。
高カロリーなとんかつですが、キャベツにはカロリーを燃やす働きも期待されるとのこと。
元々は年間を通して入手しやすい野菜だったからという散文的な理由だったようですが、とんかつと千切りキャベツは科学的視点で見てもカラダにいい絶妙なコンビだったわけです。
お寿司のガリは殺菌と消化促進!
生姜の甘酢漬け「ガリ」の殺菌作用には、握られた生魚の菌を消し、食中毒を防ぐ効果が期待されています。
また、味の濃いネタや脂がのったネタを食べたあとにガリを食べると、魚の生臭さを消したり、さっぱりと口直しにもなります。
斯くいう私は、回転寿司店や牛丼チェーン店で、いつもガリはてんこ盛りです(苦笑)。
カレーにらっきょうで食欲増進!スタミナUP!
らっきょう特有の香りの元となる成分「塩化アリル」が、消化を助け腸内環境を整える働くことから、食欲増進へと繋がります。
また、らっきょうの硫化アリルには、カラダに溜まった疲労物質を分解するビタミンB1の吸収を向上させる働きがあります。
疲労回復・スタミナUPには、カレーの具材にビタミンB1が豊富に含まれる豚肉を加えるといいですね。
ステーキにクレソンで消化を促進!
ステーキやハンバーグの付け合わせによく添えられるクレソンには、ビタミンA・ビタミンCのほか、カルシウム・鉄分・カリウムなどミネラルも豊富に含まれます。
肉料理と合わせて食べることで、不足しがちなビタミン類やミネラル類の補給の一助となるだけでなく、クレソンには消化促進作用や解毒作用もあるので、脂も多い牛肉料理との食べ合わせがとてもいいのです。
味覚面での食べ合わせも二重丸で、サシがよく入ったステーキを食べるときもクレソンの清涼感が、口の中に残る脂っこさを爽やかなものにしてくれます。
お刺身にわさびは抗菌作用で食中毒の防止に!
わさびには細菌やカビ、寄生虫の増殖を抑える抗菌作用があることが科学的にも実証されています。
生もののお刺身に抗菌作用の強いわさびを合わせると、食中毒の防止が期待されます。
また、わさび特有の辛さと香りは、生魚の生臭さを消し、お刺身の味わいを引き立たせるアクセントになりますね。
まとめ
今回は「鰻と梅干しの食べ合わせはなぜ悪い?」をメインテーマに、天ぷらとスイカなど代表的な食べ合わせの言い伝えにも科学的な根拠があるのか探ってきました。
正直、わたしも「鰻と梅干しの食べ合わせは悪い」と信じてきた一人ですが、間違いなく迷信的なものでしたね。
鰻と梅干しを食べ合わせに、なんら悪い理由が見当たりません。脂っこい鰻の消化を梅干しの酸が助ける働きがあるのですから、逆に「いい食べ合わせ」といって過言ではありません。
高価な鰻を食べ過ぎないように、消化がよくなる梅干しをあえて悪いとした説も、食べ盛りの子どもを持つ親としてはわからなくもありませんが(苦笑)。
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