夏の厳しい暑さも一段落し、すぅーと涼しい風と、どこからか聞こえてくる「鈴虫」の風情ある鳴き声に、季節の移ろいを感じる。
どこか懐かしい、夏の終わりの風景ですね。
街に緑は少なく、自然に生息する鈴虫の鳴き声を聞くことじた珍しい時代になってしまいました。
ところで、みなさんは「鈴虫が鳴く季節」はいつかご存知ですか?。
イメージ的には秋と思われる方が多いと思いますし、たしかに鈴虫は初秋にも良く鳴いています。
ただ、実際にはちょっと違うんです。
今回は、鈴虫が鳴く季節をはじめ、鈴虫の鳴き声や鈴虫の生態や寿命、さらに鈴虫の上手な飼い方など、鈴虫について幅広く紹介していきたいと思います。
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鈴虫が鳴く季節は?
冒頭でも紹介したように、「鈴虫が鳴く季節」というと、なんとなく秋をイメージする方が多いのではないでしょうか?。
近年は9月でもまだ残暑が厳しいですからね。「10月頃では?」と思っても不思議はありません。
しかし、実際には8月中旬頃、つまり「お盆時期」頃から鈴虫は鳴き始めるんです。
この後「鈴虫の生態」についても紹介しますが、鈴虫が鳴くのは成虫となってからの約1ヶ月の間。
個体によって、ふ化(卵から孵る)のタイミングの差もあることから、9月頃にピークを迎える形で、まだ夏真っ盛りの8月中旬~10月までの約2か月間、鈴虫の澄んだ風情のある鳴き声を聞くことができるのです。
つまり、鈴虫が鳴く季節とは現代でいうところの「夏~秋」という表現になります。
どうでしょう、イメージよりずっと早い時期から、鈴虫は鳴きはじめていたんですね。
鈴虫が鳴く時間帯は夕方からで、夜にかけて大きな鳴き声となりますが、これには気温が大きく関係しています。
鈴虫が活発に鳴く気温は?
鈴虫が鳴く季節は「夏~秋」と紹介しましたが、さらに重要なポイントとして「気温」が影響しています。
鈴虫が活発に鳴くようになる気温は、15℃~30℃くらいです。
鈴虫は、気温にデリケートなんですね。
鈴虫は8月中旬ころから鳴くとはいえ、夕方~夜遅くに鳴き声が聞こえるのは、気温が30℃を下回るのを待ってのことなんですね。
8月中旬のお盆を過ぎたころ、厳しかった熱帯夜もそろそろ落ち着きはじめて、鈴虫は活発に鳴きはじめます。
鈴虫の季語は?
昔から、鈴虫を「季語」にした俳句が楽しまれています。
鈴虫が鳴きはじめる8月中旬(お盆過ぎ)は、二十四節気の「立秋」(およそ8月7日~8日)を過ぎた時期ということから、現代の季節ではまだまだ夏真っ盛りから鳴きはじめるとはいえ、「鈴虫は秋の虫」であり、鈴虫は秋の季語なのです。
鈴虫の鳴き声は?違いは気持ち?
鈴虫の鳴き声、とくにペットショップやホームセンターで購入した鈴虫からは「リーン・リーン」とキレイに響く鳴き声を「繰り返し」聞くことができます。
しかし、野外での鈴虫の鳴き声を聞く機会があっても、もしや「リィィ…・リィィ…」と少し寂しげな印象の鳴き声のことも多く、「ホントに鈴虫?」と気づかない方も多いかもしれません。
この鈴虫の鳴き声の違いは、どうやら「鈴虫の気持ち」に理由があるのだとか。
鈴虫が鳴くのはオスだけ!
鈴虫の鳴き声、キレイな「リーン・リーン」も、寂しげな「リィィ…・リィィ…」も、どちらもオスの鳴き声です。
鈴虫が鳴くのはオスだけで、お目当てのメスの気を引くための鳴き声なんです。
これは鈴虫だけではなく、昆虫類全般にみられることですね。
ペットショップなどで「オス・メスのペア」で購入して同じケースで飼ってあげると、一晩中「リーン・リーン」と求愛し続けます。
この鳴き声(リーン・リーン)を「誘い鳴き」といいます。
一方、同じケース内にメスがいなければ求愛する相手がいないわけで、鳴いても「リィィ…・リィィ…」とチョッと寂しげな鳴き声でしかないのです。
この鳴き声(リィィ…・リィィ…)を「本鳴き」といいます。
野外での鈴虫の鳴き声を聞く機会があっても、「リィィ…・リィィ…」と少し寂しげに鳴いていることが多いのは、広い自然の中では、それだけオスとメスが巡り合うことが難しいということなんでしょう。
だからこそ、ひとたびメスと出会ったオスは一生懸命に「リーン・リーン」と鳴いてラブコールを送るわけです。
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鈴虫の生態と寿命!
やや順序が逆になりますが、鈴虫とはどんな虫なのか、鈴虫の生態や寿命などを押さえておきましょう。
この後紹介する、鈴虫の飼い方にも必ず役に立ちます。
鈴虫ってどんな虫?
鈴虫とは、バッタ目コオロギ科に分類される昆虫で、大きさは17㎜~25㎜ほど。
日本産のコオロギ科の中では大型に分類され、キレイな鳴き声が特徴なのはご存知のとおり。
古くから和歌に詠まれるなど親しまわれてきた鈴虫ですが、平安時代の和歌集「古今和歌集」では現在の「マツムシ」を鈴虫と詠んでいる歌もあるように、同じ秋の季節に鳴く「マツムシ」と混同されていた時代もあったそうです。
マツムシの鳴き声は、童謡「虫の声」のなかで「♪あれマツムシが鳴いている~」でもお馴染みの、「チンチロ チンチロ チンチロリン」なんですけどね。
鈴虫の生態
自然界の鈴虫は、昼間は草むらや地面に落ちた木の葉や枝などの物陰に身を隠していて、先に紹介したように気温が下がる夜になると動き出して鳴きはじめるという、基本的には「夜行性」の昆虫。
自然に生息する鈴虫は、捕まえることがかなり困難な昆虫でもあります。
また鈴虫は、コオロギ科に属する仲間「エンマコオロギ」などと比べても、足が細く・長いことから地面に穴を掘って産卵することができません。
かわりに鈴虫のメスは、長く伸びる「産卵管」を地面に差し込み産卵します。
鈴虫の成虫が越冬することはなく、卵の状態で冬を越し、気温が25℃を超えるようになる5月のGW頃~6月頃にかけて卵から孵る「ふ化」がはじまり、その後約1ヶ月半ほどの期間をかけ、7~8回の脱皮を繰り返しながらて7月頃に「羽化」します。
羽化したばかり鈴虫は、すぐに鳴くことはできません。
羽化より1ヶ月ほどかけて成虫となり、羽がしっかりと強くなった8月中旬ころから「リーン・リーン」と鳴きはじめるのです。
鈴虫の成虫の寿命は2か月たらず!
先に紹介したように、鈴虫が鳴くのはオスだけで、お目当てのメスの気を引くための鳴き声でしたね。
しかし、はかなくも晴れて交尾を終えたオスは、すぐに死んでしまうのです。
メスは、パートナーとなったオスの亡骸を食べることで産卵への栄養源とするのです。
なんだか、ちょっと残酷な光景かもしれませんが、これが自然の摂理なんですね。
メスも交尾後およそ1週間で最初の産卵をはじめ、2ヶ月ほど卵を産み続けて一生を終えます。
鈴虫の成虫の寿命は、長くても10月くらいまでの2ヶ月間。早ければ9月ころには死んでしまいます。
皮肉なもので、早々とパートナーが見つかったオスほど、その生涯は短いんですね(涙)。
鈴虫はどこにいる?捕まえるのは難しい?
鈴虫が好む環境は、下草が茂る雑木林や、川など水辺の草むらなど。人の手が入っていない自然豊かな環境は、他の昆虫類も喜ぶ環境でもあります。
カブトムシを捕まえるのも難しい都会では、鈴虫を見つけるのは難しいでしょうね。
例え鈴虫らしき鳴き声が聞こえても、姿が見えないような場所に隠れているので、捕まえるのはとても難しいと思います。
鳴かないメスを見つけるのは、なおさら大変です。
正直、野生の鈴虫を捕まえるのは難しいので、そのキレイな鳴き声を楽しむには、ペットショップやホームセンターで購入するのがおすすめです。
オス・メスペアで、500円前後で購入できますよ。
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鈴虫の上手な飼い方!
鈴虫の鳴き声が心癒してくれるのも、わずか2か月たらず…。
少しでも長生させてあげられるように、居心地のいい環境で大切に飼ってあげたいものです。
メスの産卵に成功すれば、その命を翌年へ繋げることもできますよ。
毎年、鈴虫が我が家の「夏の風物詩」となるように、鈴虫の上手な飼い方をマスターしちゃいましょう!。
・土
・水コケ(水苔)
・エサ入れ
・隠れ家
鈴虫を入れる飼育ケース
鈴虫を長生きさせ、願わくば産卵もとなれば、上部に網状の蓋が付いたプラスチック製やガラス製の飼育ケースがいいでしょう
コバエの侵入を防ぐために、上面にフィルターが付いた「コバエ防止飼育ケース」を準備できればベストです。
鈴虫はさほどジャンプ力がないので、高さはあまり必要ありません。
土
より自然に近い環境となるよう、飼育ケースの底には、土となる「スズムシマット」を敷いてあげましょう。
カブトムシの飼育で使う「昆虫マット」でも、まったく問題ありません。
また、産卵を狙うなら、少し深めに(5~6㎝)敷くようにしましょう。
水コケ(水苔)
鈴虫は水をよく飲みます。
ただし、水入れに水を注いで置くと鈴虫が溺れてしまうので、水コケ(水苔)に水を含ませたモノを小皿などに置いて与えた方がベターです。
水コケは適度に水を含みますし、鈴虫の足場にもなるので安心です。
エサ入れ
エサは直接マット(土)の上には置かず、小皿や石のくぼみなどをエサ入れとして使い与えるようにしましょう。
水分を含んだエサは、季節柄すぐにカビが生えてしまいます。またエサは、1日1回を目安に交換するなど、新鮮な状態を保ちます。
隠れ家
隠れ家とは、鈴虫が身を潜められる場所を作ってあげるモノです。
鈴虫は基本的に「夜行性」で、自然界では日中、落ち葉や草陰に隠れるように過ごしているものです。
ただ土を敷いた平面だけでなく、アクアリウムで水槽に置くような「流木」や、ホームセンターで売っているような「木炭」などを数本かさねて立体感を作ってあげると、鈴虫がリラックスして過ごせます。
「黒」は、鈴虫が好む色だとされていますし、炭の「消臭効果」も期待できるので一石二鳥かもしれませんね。
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鈴虫のエサは?
鈴虫は雑食性の昆虫なので、なんでも良く食べてくれますが、水分となる野菜だけでなく動物性のたんぱく質を与えるといいとされています。
野菜
鈴虫のエサとしてよく用いられるのは、ナスやキュウリなど水分を多く含んだ野菜類。
お盆のお飾り「精霊馬」にも使われたりしますね。
実際には、輪切りにしたり細かく刻んで与えますが、ホントよく食べてくれます。市販される粒子状の人工のエサよりも、こちらの方が食い付きがいいかもしれません。
また、専門業者の中では「鳴き声がキレイになる」と、りんごやニンジンなども与えているケースもあるようです。
動物性たんぱく質が「共食い」を防ぐ!
鈴虫には、水分が多く含まれる野菜だけでなく、動物性たんぱく質が摂れるように「煮干し」や「かつお節」などを与えるようにしましょう。
なぜなら、動物性たんぱく質が不足すると、同じケースの中の鈴虫どうしが「共食い」をはじめてしまうからです。
実際、自然界の鈴虫も草木からの水分だけでなく、他の小型昆虫を捕食することで動物性たんぱく質を補っているという、意外な一面を持ち合わせているんです。
もちろん、煮干しなど乾いたモノであっても、マットの上には直接置かず、エサ入れに入れて与えるようにします。
人工の固形エサ
とくに水分の多い野菜類は、食べ残しを交換したり、カビが心配など手間がかかるので面倒だと思われるのも当然かもしれません。
そんなときは、迷わず市販されている人工の固形エサを与えましょう。なにより、簡単で且つ安心ですからね。
大豆・魚粉・小麦粉・ヌカ・エビミール・オキアミ・ビタミンミックスなどが原材料に使われ、キレイな鳴き声を奏でる「強い羽根」を作るカルシウムや、「共食いを防ぐ」動物性タンパク質など様々な栄養素が配合されています。
コスパも高いですしね。イメージとしてはメダカのエサみたいな感じでしょうか。
鈴虫が好む湿度を保つ
成虫の鈴虫が好む湿度は、およそ60%。乾燥は厳禁です。
マットが乾いた状態にならないよう、霧吹きなどを使って、適度にマットを湿らすようにします。
飼育ケース内の雰囲気湿度も大切ですから、重点的にマットだけにスプレーするのではなく、飼育ケースの内側の壁へスプレーするというのも効果的です。
絶対ダメというわけではありませんが、なるべく鈴虫へ直接かからないように注意してくださいね。
まとめ
今回は、鈴虫が鳴く季節をはじめ、鈴虫の鳴き声や鈴虫の生態や寿命、さらに鈴虫の上手な飼い方など、鈴虫について幅広く紹介してきましたが、興味深い点もあったのではないでしょうか。
気温が15℃~30℃に下がると活発に鳴きはじめることから、鈴虫が鳴く季節を秋とイメージされる方も多いのでしょう。
しかし実際には、鈴虫が鳴く季節はおよそ夏~秋。時期的には、お盆時期となる8月中旬~10月頃です。
その鳴き声は、鈴虫の寿命にも深く関係していて、成虫となり繁殖期を迎えた8月~10月のわずか2か月足らずの間、オスがお目当てのメスの気を引くために鳴くというものでしたね。
求愛のために鳴くことじたいは、他の昆虫類でもよくあることではありますが、興味深いのは近くにメスがいるかどうか、オスの気持ちの違いで鳴き声が変わるという点です。
・メスが近くにいるときの鳴き声は、「リーン・リーン」と繰り返し求愛し続ける「誘い鳴き」。
・メスが近くにいないときの鳴き声は、「リィィ…・リィィ…」というちょっと寂しげな「本鳴き」。
気温だけでなく、気持ちも鳴き声に表れる鈴虫って、ほんとデリケートな昆虫なんですね。
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