「食欲の秋」といわれるように、朝に夕に秋の季節を感じるこの時期は、様々な食べ物が美味しい旬の時期を迎えます。
頭に「秋」がつく代表的な食べ物に、魚介類では秋鯖(さば)や秋カマス、秋の鮗(このしろ)などがあげられ、野菜類では秋茄子(なす)が有名です。
ところで、この頭に「秋」がつく美味しいものには、「秋茄子は嫁に食わすな」に代表されるような、お嫁さんが可愛そうに思ってしまう「○○は嫁に食わすな」といったことわざが多いですよね。
今回「○○は嫁に食わすなシリーズ」から取り上げることわざは、
「秋鯖は嫁に食わすな!」
それにしても、なぜ秋鯖を嫁に食べさせてはいけないのでしょう。
その理由にはいくつかの説があるようですが、やはり嫁イビリの姑根性なのでしょうかね(苦笑)。
・秋鯖とは?
・秋鯖の旬の時期
・秋鯖はなぜ美味しいのか?
・美味しい秋鯖の選び方
などを合わせて探っていくと、決して「嫁イビリ」だけが理由ではないと思えてきます。
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「秋鯖は嫁に食わすな」の理由は、決して嫁イビリの姑根性ではない!?
昔から伝わることわざを探ると、「○○は嫁に食わすな」はとても多いことがわかります。
当然それは、秋だけでなく春夏秋冬、それぞれの四季ごとに美味しいものが取り上げられています。
・二月鰈(カレイ)
・五月蕨(ワラビ)
・夏ダコ
・秋茄子
・秋カマス
などなど…。
そこに、今回テーマに取り上げた秋鯖(さば)も含まれます。
たしかに、呼び名の頭につく季節や月は、ぞれぞれの食材の一番美味しい旬を指しています。
「美味しいものを嫁に食べさせてなるものか!」
そんな、姑の意地悪根性がことわざに表されたという説が有力とされています。
しかし、日本のことわざには隠れた「裏」もあるものです。
> 秋茄子は嫁に食わすな?由来から考える本当の意味!秋茄子の旬の時期は? < と同様に「秋鯖は嫁に食わすな」にも、嫁イビリだけが理由ではなく、お嫁さんのカラダを気遣うような深イイ説があるのです。
秋鯖は美味しいので嫁に食わせるなんて勿体ない説!
なぜ「秋鯖は嫁に食わすな」なんて、厳しいことわざが生まれたのでしょうか?。
その理由にはいくつかの説があるとされますが、「○○は嫁に食わすなシリーズ」に共通する、美味しいものものだからこそ、嫁風情に食べさせるなんて「勿体ない」という嫁イビリの姑根性が表れているという説が代表的。
秋鯖が美味しい理由は、春~夏に産卵を終え、一旦痩せた鯖が餌を食べまくり栄養を摂り込むことで、丸々と脂がのっているからです。
そもそも鯖じたい、町に住む庶民(町民)の間では入手しやすい魚ではありましたが、村で農家を営む農民ともなると、そうそう鯖を買って食べられるほど生活に余裕はありませんでした。
2~3匹の鯖を大家族で分け合いながら食べるのですから、姑からして食べさせたい序列は、旦那や息子、可愛い孫の順であって、嫁に食わすなんて勿体ないと思うものだったのでしょう。
姑からすると、血縁関係にないのはお嫁さんだけになりますからね…(怖っ)。
秋鯖は食あたりしやすいから嫁に食わすなという説!
「秋鯖は嫁に食わすな」ということわざには、勿体ないという嫁イビリの姑根性以外に、逆にお嫁さんのカラダを気遣ってのものという説もあります。
秋鯖は鮮度が落ちやすいので、あたりやすい。世継ぎを産んでもらわなきゃいけない、お嫁さんのカラダに悪いから「食べさせるな」というものです。
現在のように冷蔵庫があるわけもなく、魚売りから買った魚の鮮度はかなり怪しい。
産卵を終えた秋鯖は脂がのって美味しいですが、鮮度が落ちたものなら、大事なお嫁さんのカラダが心配です。
言葉的には厳しく聞こえるものですが、あえて「秋鯖は嫁に食わすな」といったという説です。
産卵を終えた秋鯖を食べると「子宝に恵まれない」という説!
こちらは、日本人が大好きな「ゲン担ぎ」に他ならないでしょう。
秋鯖は、産卵を終えたあと栄養を摂ることで、さらに脂がのって美味しくなります。ここで問題になるのが、秋鯖は「産卵を終えた」鯖であること。
既に卵を持たない秋鯖は「子宝に恵まれない」と連想されることで、「秋鯖を食べると子宝に恵まれない」と結びつけらることにあります。
嫁とは「夜目(ネズミ)」を指すという説!
ここでいう嫁とは、じつは「夜目」と書くネズミのことを指したものという説があります。
これは、> 秋茄子は嫁に食わすな?由来から考える本当の意味!秋茄子の旬の時期は? < で紹介したのと同様です。
共通するのは「美味しいものをネズミに食べられては勿体ない」という意味ではありますが、気になるのは、夜目とはネズミのことでありながら、嫁を表す「隠語」として使われていた言葉であること。
夜目(ネズミ)=嫁に食べられないように注意しな!。
やっぱり、嫁いびりの姑根性なのでしょうかね?。
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なぜ「秋鯖は嫁に食わすな」なのか?
なぜ「秋鯖は嫁に食わすな」なのか、理由となるいくつかの説をここで一度まとめます。
➀秋鯖は脂がのって美味しいけれど、沢山は買えないので嫁に食わせては勿体ない
➁秋鯖は鮮度が落ち「食あたり」しやすので、お嫁さんのカラダを案じ食べさせられない
➂産卵を終えた卵をもたない秋鯖には「子宝に恵まれない」ことが連想される
➃「夜目」と書くネズミに食べられては勿体ない
兎角、➀のような嫁イビリの姑根性がクローズアップされますが、心情的にはことわざの裏に隠された部分、お嫁さんのカラダを思う➁や、家の子孫繁栄を願う➂がその理由だと願いたいところです。
秋鯖の旬の時期は?
秋鯖は嫁に食わすなといわれる理由を色々探ってきましたが、やはり有力なのは「秋鯖は脂がのって美味しい」ことに因んだものです。
となれば、
・秋鯖が美味しい旬の時期
・美味しい秋鯖の選び方
このあたりが、さらに知りたくなる情報ではないでしょうか?。
どうぞ、スーパーの鮮魚コーナーに「秋鯖」が並び始めたときの参考にして下さい。
秋鯖が美味しい旬の時期は?
元は同じ鯖でも、秋鯖や寒鯖など、時期によって呼び方・名前が異なります。
なかでも、特に美味しいとされるのが、10月~11月頃に水揚げされる「秋鯖」。
春~夏の時期に産卵し終えた鯖は一旦痩せてしまいますが、再び栄養を摂り込むことで丸々と脂がのって、「最も美味しい」といわれる秋鯖となるのです。
12月~1月頃に旬を迎える寒鯖も、脂がのって美味しいといわれるのですが、1月に入ったあたりから、鯖のカラダは次の産卵シーズンに向けた準備に入ることで、次第に脂が落ちはじめるということもあって、美味しい鯖は「秋鯖」に軍配が上がるのです。
秋鯖は真鯖(マサバ)!
私たちが口にする鯖の種類を大きく分けると、真鯖(マサバ)と胡麻鯖(ゴマサバ)に大西洋鯖(タイセイヨウサバ)を加えた3種類。
大西洋鯖とは「ノルウェーサバ」とも呼ばれる鯖で、1980年代頃からスーパーの鮮魚コーナーにも出回るようになり、現在では「しめ鯖」や「干物」など加工された鯖は太平洋鯖であることも多く、回転寿司のネタにも使われていることが多いそうです。
この3種類の鯖の中で、秋~冬に「秋鯖」として、格別に美味しくなるのが真鯖。
スーパーの鮮魚コーナーを覗けば、1年中「鯖」は扱われていますが、脂がのって美味しい「秋鯖」を名乗るのは、旬を迎えた秋(10月~11月)に水揚げされた真鯖だけなのです。
もしも店頭で「秋鯖」と表示されてなくても、丸々と太って脂がのった真鯖(マサバ)が美味しいですよ。
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美味しい秋鯖の選び方!
脂がのった美味しい秋鯖!。
ここからは、より美味しい秋鯖の目利きとなる「美味しい秋鯖の選び方」の5つのポイントを見ていきましょう。
目が透きとおって濁っていない!
透明で透きとおり潤んだ目は、新鮮な秋鯖の証!。
秋鯖だけでなく、魚は鮮度が落ちてくると、白く濁ったような目になっていきます。
エラの中が鮮やかな紅色ほど新鮮!
お店に並ぶ秋鯖。可能なら「エラブタ」をチラッと持ち上げて、エラの中が鮮やかな紅色であるほど新鮮!。
薄いピンク色になっていたり、さらに茶色っぽくなっていた鯖は、鮮度が落ちています。
お腹がふっくら膨らみ張りがある!
よく脂がのって丸々太った秋鯖は、お腹がふっくら膨らみ張りがある感じです。お腹がぷっくりしている分、相対的に顔が小さく見えます。
鮮度が落ちてきると、内臓が傷みだしお腹が柔らかく薄く(小さく)なってきます。
ちょっと失礼して、軽くお腹を触ってみて「固い」もの、表面にヌメリ感があるほど新鮮な鯖の証です。
背中の模様が濃い!
「さば紋」と呼ばれる背中の模様が、青緑色が濃く表れているものほど新鮮です。
トレイの下に血が溜まっていないもの!
スーパーでは、トレイなど食品容器に詰められ並ぶ鯖ですが、トレイの下に血が溜まっているものは、生臭さが移ってしまって新鮮な鯖が台無しです。
トレイの下に血が溜まっていないものを選びましょう!。
目・エラ・お腹・模様・トレイの血、この5つが目利きのポイント!。どうぞ、美味しい秋鯖を手にして下さい!。
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まとめ
数ある「○○は嫁に食わすな」シリーズから、今回は「秋鯖は嫁に食わすな」をテーマに取り上げました。
鯖は、年間を通じてスーパーの鮮魚コーナーで取り扱われているように、とても身近な魚の1つです。
なかでも、10月~11月頃の真鯖(マサバ)は「秋鯖」と呼ばれるようになり、年間で一番美味しい旬の時期を迎えます。
真鯖は春~夏の産卵期を終えると、一旦痩せたカラダを取り戻すために餌を食べまくります。
十分に栄養を摂った真鯖は、秋を迎える頃には丸々と脂がのったカラダとなり、どんな料理にしても美味しい「秋鯖」となるわけです。
そんな美味しい秋鯖だからこそ、嫁イビリの姑根性から「秋鯖は嫁に食わすな」の言葉が生まれたという説が有力視されるのも無理ありません。
さらに近年は、秋鯖となる真鯖の漁獲量が減少していて、たいへん高価なものになっています。
昔から「鯖の生き腐れ」といわれるように、鯖は傷みやすい魚とされてきました。
だからこそ、鯖の本場の九州では「刺身」、山陰では醤油仕立ての「すき焼き」、より遠い関東以北では「しめ鯖」や「鯖の味噌煮」など、地方・地域で鯖を使った自慢のご当地料理が異なるのでしょう。
もちろん、流通過程の保冷技術も高まる現在は、秋鯖はお刺身でよし、〆てよし、煮ても焼いてもよしです!。
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