転んで擦り剝いた傷も、消毒など適切な処置を施せば、かさぶた(瘡蓋)ができて自然と回復へ向かうことは、みなさんも経験上ご存じと思います。
お子様だと剥がして、また血が出てきてしまうこともありますし、大人でも痒いなど気になって、かさぶたを無性に剥がしたくなる衝動に駆られることがあるのではないでしょうか。
しかし、傷を塞ぐようにできたかさぶたは、自然に剥がれ落ちるまで無理に剥がしてはいけないと、それこそ子供の頃から教わってきました。
今回は、かさぶたを剥がすとどうなるのか?、なぜ剥がしてはいけないのか?を中心に、かさぶたの正体・役割や、かさぶたを作らない傷口を治す方法などについて探っていきましょう。
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かさぶた(瘡蓋)の正体・役割とは?
かさぶたは、転んだりして擦り剝いた傷の上にできて、赤黒い色からして一見「血液の塊」のように思われますが、出血を伴う怪我を負ってからいくつかの工程を踏んで作られ、けっこう複雑な構造をしています。
かさぶたの正体
かさぶたの正体(構成成分)は、血液に含まれ赤血球や血小板、血液を固めるフィブリンというたんぱく質です。擦り傷など傷口から流れ出た血液が固まりながら、傷の表面をカバーします。
かさぶたができる流れ
1.擦り傷など皮膚から出血があると、カラダは傷口からの出血量を減らそうと血管を収縮させます。
2.血液中の血小板が傷口に血の塊を作り、傷口を塞いでいきます。
3.傷口を塞いだ血小板は、その後フィブリンと呼ばれる繊維質のたんぱく質へ変化しながら、さらなる血小板や赤血球と合わさり、傷口を守るかさぶたが作り上げられます。
かさぶたの役割
かさぶたの役割は、先の「かさぶたができる流れ」で紹介したように、傷口を塞ぎ出血を止めることが第一です。
傷口から雑菌が侵入することを防ぎ、傷の回復を速やかにすることに働きます。
傷口が完全に塞がり下の皮膚が生まれ変わると、自然とかさぶたは剥がれ落ちていきます。
それまでは、見た目がきになったり痒みがあったとしても、かさぶたは無理に剥がさないことが大切です。
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かさぶたを剥がすとどうなる?
傷口が回復すれば、かさぶたは自然に剥がれ落ちるものですが、見た目が気になったり、痒くて我慢できないなど、かさぶたを無理に剥がすとどうなるでしょう?。
経験された方も多いと思いますが、かさぶたの下の皮膚は完全に塞がっていないので、かさぶたを剥がすと再び出血してしまいます。
すると、傷口を塞ぐために血小板は傷口に血の塊をつくり、繊維質のたんぱく質フィブリンとなって新たなかさぶたが作られるのです。
かさぶたを剥がすことを繰り返すと?
かさぶたを無理に剥がすことを繰り返すと、カラダは新しい皮膚を作るための物質を過剰に分泌することになり、結果的に部分的にテカテカとした「やけどの跡」のような皮膚が作られてしまいます。
かさぶたを剥がしことを繰り返し、やけどの跡のようになった部分は、周囲の肌とは違う色合いになり目立つかもしれません。
ただでさえ、かさぶたは擦り傷ができやすい肘・膝・顔など、露出の多い部分にできやすいもの。
見た目が気になったり痒みがあったりと、かさぶたを無理に剥がしてしまいたくなるお気持ちはわかります。転んで顔にかさぶたができたりしたら、女性だと我慢できないかもしれません。
それでも、かさぶたは無理に剥がしてはダメです!。
後々、見た目がやけどの跡のような皮膚・肌にならないために、かさぶたは自然に剥がれるまで我慢です。
かさぶたを剥がすことは、せっかく傷口を外部から守ってくれていたものを取り払い、傷口を露呈させてしてしまうこと。
雑菌が侵入しやすくなり、感染症のリスクが高まります。
とくに小さいお子様の場合、虫刺されの跡を掻いてできた傷口のかさぶたを痒いと繰り返し剥がすことで、いわゆる「とびひ」と呼ばれる「伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)」を罹ることも多いので、よくよく注意してあげてください。
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かさぶたはなぜ痒くて剥がしたくなるのか?!
かさぶたの不思議に、傷が治ってくると痒くなり、ついついかさぶた剥がしてしまいたくなること。無理に剥がせば、治りかけていた傷から再び出血してしまうこともあります。
元々は傷から雑菌の侵入を防ぎ、治りを早めるために作られたかさぶたなのに、なぜ痒くなり、無性に剥がしたくなるなど傷の治りを邪魔するのでしょう。
皮膚には、痛みを感じる神経「痛点(つうてん)」というものがありますが、痒みを感じる神経はないといわれています。
そのため、痛みが軽いときには、痛みを感じる神経が痛みを痒みと感じてしまうのだとか。
つまり、傷を覆うかさぶたの下が痒く感じるのは、治りかけの傷の痛みが軽いために本来痛みを感じる神経が「痒い」と感じていると考えられるのです。
かさぶたの痒みには塗り薬か保湿で対策!
転んで負った擦り傷などであれば、およそ皮膚が再生するまで1週間~10日ほどかかるもの。
その間に痒みなど気になって無理に剥がすと傷口の回復が遅れるだけでなく、やけどの跡のように周囲の肌と違う色合いになるなど、傷跡として残ってしまいかねません。
傷口が乾燥することでかさぶたが厚くなることで、皮膚が刺激され痒みとなることもあります。塗り薬などで保湿するのも効果的。
くれぐれも無理に剥がしてはデメリットが大きいので「どうしても剥がしたい」ときは、お風呂などお湯に浸して柔らかくなったところで少しづつ削っていくのも1つ。
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かさぶたを作らない傷口の治し方!?
古くから、転ぶなどしてできた擦り傷に対し「傷口を塞ぎ乾いてできたかさぶたが傷口を保護する」ことが治る過程の常識でした。
しかし、かさぶたができれば、見た目が気になったり痒みがあったりなど、かさぶたを無理に剥がしてしまうことに繋がるということもあり、現在は最初から「かさぶたを作らない治し方」をすればいいのでは?という考え方が増えてきています。
傷口にかさぶたを作らず、適度な湿度を保ちながら治療を進める「湿潤療法」というもの。
かさぶたを作らない湿潤療法とは?
1.水道水で傷口を洗い清潔にする!
水道水を使い、傷口についたごみや雑菌を洗い流します。とくに食毒しなくてもOKです。
日本の水道水は殺菌されて綺麗なので、入念に傷口を洗い流す、それだけで十分です。
2.傷口の出血を止める!
湿潤療法で治せるかどうかを見極めます。タオルやティッシュなどで傷口を押さえても、傷口からの出血が止まらない場合は、かさぶたを作らない湿潤療法には不向きであるということ。
旧来通り、傷口を乾燥させてかさぶたを作る治療方法としましょう。
3.湿潤療法用の絆創膏を貼る!
湿潤療法用の絆創膏は、ドラッグストアでも扱われています。わからなければ、薬剤師さんや店員さんに尋ねてみてください。
もしも、湿潤療法の絆創膏が入手できない場合は、ワセリンを傷口に塗り、ラップを巻き付けるという方法もあります。
この湿潤療法なら、傷口を乾燥させず常に皮膚が湿っている状態になるので、かさぶたが形成されません。
さらに、湿潤療法用の絆創膏は貼り直す際の痛みもないので、小さなお子様でも安心です。
まとめ
今回は「かさぶたを剥がすとどうなる?」をメインテーマに、かさぶたの正体や役割、無理に剥がすとどうなるのかなどを紹介しました。
かさぶたは、外部から傷口を守ってくれる大切な役割があります。
見た目が気になったり痒くなったとしても、かさぶたは自然に剥がれ落ちるまで無理に剥がさないことが、傷の治りを早め傷口をきれいに治すことにつながります。
記事の終わりに紹介した、最近増えつつある「かさぶたを作らない」治療法となる湿潤療法。
どうしてもかさぶたを剥がしたくなってしまう方や、小さなお子様に効果的な治療法になるのではないでしょうか。
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