日本には、生まれてから一定の年齢になるごとに、「年祝い」と呼ばれるお祝いをする慣わしがあります。
七五三や成人式なども、年祝いの1つといえるでしょう。
年祝いは、「無事に成長することができた」ことを神様へ感謝する思いから始まり、徐々に年齢を重ねることで「長寿」に対するお祝いの意味が強くなっていきくことで「長寿祝い」へとなっていきます。
長寿祝いの種類の中でも、誰もが知っている「還暦」は、赤いちゃんちゃんこを着たり、赤い帽子を被る姿が容易にイメージされる最初の長寿祝いでしょう。
60歳の還暦から始まり、70歳の「古稀」や88歳の「米寿」など、長寿祝いにはたくさんの種類があり、それぞれに意味やお祝いの色があります。
とはいえ、最近の60歳代・70歳代の皆さんは、まだまだ若々しく元気ですよね。
再雇用制度を利用すれば、より長く働くことができますが、60歳定年を採用している企業はまだまだ多く、現代社会でも還暦を迎える60歳が人生の節目になっていることは否めません。
私の両親もすでに70歳代半ばですが、「還暦」も「古希」もあらたまってお祝いせずに過ぎてしまっています。
そろそろ、しっかりと「長寿祝い」してあげなければバチがあたりそうですね。
今回は、長寿祝いの年齢ごとの種類や意味・由来、長寿祝いのお祝い色などを、順をおって見ていきましょう。
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長寿祝いとは?
長寿祝いには、その人の長寿を祝う思いと同時に、自らも長寿にあやかりたいという意味が含まれています。
現在は広く定着した長寿祝いも、元々は中国で行われていた慣わしが奈良時代に日本に伝わり、平安時代に宮廷や公家の中で広まったものでした。
戦国時代の三英傑(さんえいけつ)織田信長が好んで演じた、幸若舞「敦盛」の一節
人間五十年、下天のうちを比ぶれば、夢幻の如くなり。ひとたび生を得て滅せぬもののあるべきか
にあるように、この当時の40歳は「初老」であり60歳ともなれば「長寿」であることが窺い知れます。それ故、平安時代ころの長寿祝いは40歳が始まりで、以降10歳ごとにお祝いがなされています。
・40歳 : 初老の賀
・50歳 : 五十(いそじ)の賀
・60歳 : 六十(むそじ)の賀
還暦のあとの長寿祝いは日本ならではの慣わし!?
長寿祝いの年齢ごとの種類をみていくと、10歳ごとを節目とするお祝いに加え、66歳・77歳・88歳・99歳など「ゾロ目」の年齢でもお祝いがあることがわかります。
奈良時代に中国から伝わり、平安時代に宮廷や公家の中で広まった40歳~10歳ごとにお祝いする長寿祝いも、室町時代以降に人の寿命が延びていくにつれ、徐々に生まれたいったお祝いだといえそうです。
当初は宮廷や公家のなかでの慣わしだった長寿祝いは、さらに江戸時代以降は庶民の間にも広まり、現在のように一般的に定着するようになりました。
それにしても、日本人ってなぜ「ゾロ目」が好きなんでしょうね(笑)。
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長寿祝いの種類!年齢や意味・由来、お祝い色は?
長寿祝いには「還暦の61歳(満60歳)」や「古希の70歳」をはじめに、節目となる年齢ごとにお祝いの種類・名称があり、それぞれ意味があります。
もともと日本では数え年(生まれた年が1歳)とする風習があり、長寿祝いも数え年でお祝いされていましたが、現在はわかりやすく「満年齢」でお祝いすることが一般的になっています。
ただし「還暦の61歳」だけは現在も数え年の61歳(満60歳)でお祝いされています。たしかに、その形の方が現代的でわかりやすいですからね。
さて、ここからは還暦から始まる年齢ごとの「長寿祝いの種類」と、それぞれ何色でお祝いするのか「お祝い色」について順番にみていきましょう。
先頭バッターは、もちろん還暦の61歳からです!。
それぞれ長寿祝いの種類と年齢、お祝いの意味と色を覚えておくことは、お祝いのプレゼントや添える言葉を選ぶヒントになります。
61歳! 還暦(かんれき)
先にも紹介したとおり、現代における最初の長寿祝いとなるのが、数え年で61歳(満60歳)のお祝い「還暦」。
還暦の「還」には、生まれてから干支を5回繰り返すことで「自分の生まれた干支に戻る」ことで、一巡りしたという意味があります。
還暦のお祝い色は赤!
還暦といえば、誰もが「赤いちゃんちゃんこ」をイメージされるでしょう。
還暦のお祝い色の赤には「暦が一巡し赤ちゃんに戻る」という意味があるのです。赤いちゃんちゃんこや赤い帽子は、赤ちゃんの赤に由来するものなのです。
現代に於ける満60歳は、まだまだ長寿祝いされることに抵抗がある年齢かもしれませんが、写真に写るご両親の姿はとても可愛らしいと思いますよ。
66歳! 緑寿(ろくじゅ)
実はこの66歳の緑寿と呼ばれる長寿祝いは、まだまだ歴史も浅く、あまり知られていないものかもしれません。
というのも、還暦(60歳)から古希(70歳)までの10年間に長寿祝いがないことや、このあと紹介する77歳・88歳と続くゾロ目の長寿祝いに対し、66歳がないことに目をつけた「日本百貨店協会」が2002年に打ち出し普及させた、いわば商業戦略色の強い長寿祝いなのです。
そもそも日本には、土用の丑の日の鰻・クリスマスのチキン・節分の恵方巻など、商業戦略色の強いお祝いやイベントが多いですしね。
なかなかご両親に感謝を伝える機会も少ないなか、そんな商業戦略でさえも長寿をお祝いする機会が1つ増えると捉えればいいのかもしれません。
緑寿のお祝い色は緑!
緑寿のお祝い色は、その名前のとおり緑です。
緑寿という長寿祝いの名前さえも、66歳はまだまだ元気なイメージを「緑々」に例えたものですから。
66歳の緑寿じたいが商業戦略色が強い長寿祝いだけに、名前もお祝い色も「とってつけた感じ」は否めませんね(苦笑)。
70歳! 古希(こき)
70歳の長寿祝い「古希」は、唐時代の中国の詩人「杜甫(とほ)」が詠んだ詩、「人生七十古来稀也(じんせいしちじゅうこれまれなり)」に由来しています。
詩が意味する「70歳まで生きるのは稀である」のとおり、その昔(唐時代)で70歳まで生きることは正に稀(まれ)なことであり、奇跡に近いことだったに違いありません。
医療の進化や人々の健康意識向上などで「健康寿命」が延びている現代に於いては、60歳の還暦より70歳の古希の方が、その先の長寿に向け本格的にお祝いしはじめる長寿祝いになるのかもしれません。
古希のお祝い色は紫!
70歳の古希のお祝い色が紫である由来に、正直これぞ思える有力な説がみつかりません。
ただ、飛鳥時代に聖徳太子が定めた「冠位十二階」に於ける最高位の色が紫であったように、日本では古くから紫が高貴なものを象徴する色であったことは確かです。
70歳まで生きることが稀であった時代、古希のお祝い色を紫としたことに不思議はありませんね。
77歳! 喜寿(きじゅ)
77歳の喜寿は、「喜の字の祝い」とも呼ばれています。
なぜなら、喜という漢字は草書体で書くと「㐂」となり、見ようによっては「七十七」にも見えるからだとか。
還暦や古希といった10歳ごとの長寿祝いが中国から伝わったものに対して、ゾロ目77歳の喜寿は日本の室町時代の末期に生まれたものとされています。
時代とともに、長生きされる方が多くなってきた賜物でしょう。
喜寿のお祝い色は紫!
喜寿のお祝い色も、古希と同じく紫。なかには、喜寿の「き」から黄色とされる説もあります。
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80歳! 傘寿(さんじゅ)
60歳(還暦)・70歳(古希)と10歳ごとの長寿祝いに続くのが、80歳の傘寿(さんじゅ)。
傘という漢字の略字「仐」が八十に見えることが由来といわれますが、傘を開いた姿が「末広がり」であることも縁起がいいとされています。
傘寿のお祝い色は金茶色!
傘寿のお祝い色は、金茶色と呼ばれる金色っぽい茶色。
金茶色とは、西暦1688年~1704年の元禄年間の「元禄文化」で生まれた色で、現在も和装や和装小物などで用いられる色。
ただ、長寿祝いなどお祝いのプレゼントを選ぶとなると、なかなか金茶色に当てはまる色合いの物を見つけることは難しく、一般的にはオレンジ色や黄色で代用されることが多いようです。
81歳! 半寿(はんじゅ)
81歳の半寿は、正直あまり知られていない長寿祝いかもしれません。なかには、「そんな長寿祝いあったの?」という方も少なくないのではないでしょうか。
「半」という漢字を分解してみると、「八」「十」「一」の組み合わせに見えることから、81歳の長寿祝いが「半寿」となったとされていますが、なにやらここまでくると商業戦略とはいえ、ムリヤリ感が堪りませんね。
それよりも、将棋盤は縦横9マスづつあって九九「81」ということにちなんで、81歳を「盤寿(ばんじゅ)」と呼ばれお祝いされていることの方が興味深いですね。
半寿のお祝い色は金茶色!
半寿の祝い色も、80歳の傘寿と同じ「金茶色」です。
88歳! 米寿(べいじゅ)
88歳の米寿といえば、長寿祝いなかでは還暦に次ぐ、いや還暦以上に大御所的な存在でしょう。
米という漢字を分解すると「八」「十」「八」に見えることからに由来しています。
また、米寿は「米の祝い」ともいわれます。
日本の食文化は、正に縄文時代後期~弥生時代初期から続く米文化であり、米は最も大切にされてきた農作物です。
さらに、米の字を分解すると、末広がりをイメージさせる「八」が2つも重なり実におめでたいということもあって、長寿祝いのなかでも一番盛大なお祝いがなされるようになったとされています。
米寿のお祝い色も金茶色!
米寿のお祝い色も、80歳の「傘寿」から続く「金茶色」。
90歳! 卒寿(そつじゅ)
どうしても88歳の長寿祝いとなる米寿が盛大にお祝いされることが多いので、卒寿はややお祝い感が弱い感じもしますが、還暦から続く10歳ごとの長寿祝いです。
念のために、いくら「卒」の字が用いられているからといって、卒寿は人生の「卒業」を意味するものではありません。
「卒寿」も「卒」の字の略字「卆」を分解したすることで、「九」「十」に見えることに由来するといわれます。
医療が進んだ現代でも、90歳を迎えられる方は限られてくるというのも事実です。しっかりお祝いしてあげたいですね。
卒寿のお祝い色は紫!
卒寿のお祝い色は、70歳の古希のお祝い色に戻る形で紫になります。
金や金茶色のような派手さはありませんが、やはり紫は聖徳太子の時代から続く高貴なものを象徴する色に違いありません。
99歳! 白寿(はくじゅ)
100歳まであと1歳となる99歳の長寿祝いが「白寿」です。
いやはや、ここまで長生きしたら100歳のお祝いでいいのでは?と思うでしょうが、66歳(緑寿)・77歳(喜寿)・88歳(米寿)とゾロ目でお祝いしてきたのですから、99歳も是非ともお祝いしなくては。
しかも、この99歳の白寿こそ、その由来を知ると無理やり感が否めません。
「100-1=99」、この算数の式を漢字で書いてみると、「百」-「一」=「白」になるからだといいます。
白寿のお祝い色は白!
白寿のお祝い色は、疑うまでもなく名前の通り「白」です。
100歳! 百寿(ひゃくじゅ)
100歳の長寿祝いには「百寿」だけでなく、10歳ごとの長寿祝いの「百賀(ひゃくが)の祝い」や、1世紀(100年)生きたことによる「紀寿(きじゅ)」・「上寿(じょうじゅ)」など様々なお祝いの名前があるように、それは特別な長寿祝いになることでしょう。
何といっても、1世紀(100年)を生きてこられたわけですし、その節目を迎えられる人は決して多くない貴重なものです。
もちろん「おめでとう」の意味が大きいお祝いであることは当然ですが、これからも元気で長生きして欲しい気持ちがますます強くなります。
百寿のお祝い色は無色?
実は、百寿には決まったお祝い色はないとされます。
強いていえば「百」は「もも」と読むこともできるので、「桃色」が用いられることもあるようです。
特に決まったお祝い色がないのですから、ご本人が好きな色を用いた贈り物などでお祝いされるのがベストなのでしょう。
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長寿祝いのプレゼントの傾向と相場は?
明治・大正時代以前は平均寿命が50歳に届いていなかった日本も、今や世界トップクラスの長寿国家となりました。
平均寿命だけでなく健康寿命も延びた現在、60歳を迎えても現役世代に負けず働き続けていらっしゃる方も多いことから、もはや還暦祝いは長寿祝いというよりも、職場の定年制度と相まって「人生の1つの区切り」にお祝いする意味合いが強くなっています。
それは長寿祝いのプレゼントの傾向にも表れ、昔のような「お年寄り向け」の物ではなく、ご両親の趣味に合わせて、スポーツウェアやお酒、旅行券や近しい親族での食事や旅行をプレゼントとする場合が増えているようです。
長寿祝いの金額の一般的な相場は?
そもそも長寿祝いは家族や身内でのお祝い事なので、基本的に他人から「こうすべき」的なしきたりやタブーを考える必要はありません。
とはいえ、プレゼントを贈る側の年齢や立場(子・孫・親族)によって、一般的な金額の相場がどれくらいなのかも気になるところでしょう。
息子・娘からの長寿祝いの相場は?
還暦(60歳)以上の親の長寿祝いですから、その子どもとなる息子・娘もそれなりの年齢でしょう。
金額としては、2万円~5万円くらいが相場。
長寿祝いを迎えた両親へ、感謝と思いやりをもってプレゼントを選びたいですね。最近の本人の趣味・嗜好によりいい物をと思うなら「カタログギフト」も便利ですね。
冊子で選んでハガキで商品申し込む形を選択すれば、ご両親も安心して楽しんでいただけると思います。(熨斗(のし)やメッセージカードのオプションもあります。)
孫からの長寿祝いの相場は?
孫から祖父・祖母へ長寿祝いを贈る場合、成人もしくは就職した社会人の孫なら1万円~3万円、未成年や学生なら3千円~1万円あたりが相場でしょうか。
祖父・祖母からすれば、孫からの長寿祝いのプレゼントに金額など重要ではありません。
お爺ちゃん・お婆ちゃんは何が好きかな?と考えたことが、何より嬉しいプレゼントとなることでしょう。
思い切って最近流行っている商品を選ぶのも、話題を共有できて楽しんでもらえるかもしれませんね。
まとめ
今回は長寿祝いについて、年齢ごとのお祝いの種類や意味・由来、長寿祝いのお祝い色など、順をおって見てきました。
奈良時代に中国から伝わり、平安時代に宮廷や公家の中で広まったのが始まりとされる長寿祝い。
時代とともに、人々が長寿となることで、長寿祝いの種類も色々と増えていき、10年ごとの節目のお祝いに日本人が好きなゾロ目の年齢のお祝いがプラスされていった感じがします。
還暦で着る「赤いちゃんちゃんこ」や「赤い帽子」に代表されるように、それぞれの長寿祝いにも「お祝い色」があります。
お祝いのプレゼントを選ぶ際には、それぞれの「お祝い色」にちなんだものを選ぶというのもいいでしょう。
お母さまへは、お祝い色に合わせた帽子などは如何でしょう?。
私の母親なら、古希や喜寿のお祝い色の「紫色」のベレー帽などが似合いそうかな…なんて想像します。
正直、盆・暮れ・正月以外、なかなか家族を連れて両親の元へ帰れていません。
離れて暮らす両親と顔を合わす機会、兄弟・親戚が集まる機会を1つでも多くするためにも、両親の長寿祝いという機会を上手に生かしていければと思います。
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