みなさんは食事の際、ご飯と味噌汁を配膳する左右の位置関係はどうなっていますか?。
和食の献立は、主食となるご飯に味噌汁などの汁物、メインのおかずとなる主菜、煮物や和え物などの副菜・副々菜の「一汁三菜」が基本ではありますが、色々な理由からそれぞれの料理が配膳される位置にマナーや常識があります。
たとえば、ご飯と味噌汁なら「ご飯は左で味噌汁は右」です。
味噌汁はなぜ右なのか?。
本家知恵袋サイトを覗くと、
右利きの人にとって味噌汁のお椀が右にあると邪魔だし、お箸を動かしているうちに万が一、手や袖を引っ掛けてお椀をひっくり返すリスクがあると思うのですが。
とあります。たしかに一理ある意見のようにも思えます。
筆者も大人になるまで、味噌汁はなぜ右に置き、一々左手をクロスさせてるように持ち上げるのか不思議でなりませんでしたから。
今回は「ご飯は左で味噌汁はなぜ右に配膳するのか?」をメインテーマに、和食のマナーの常識や古来に遡るその理由を探っていきましょう。
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ご飯は左で味噌汁はなぜ右に配膳するのか?その理由は?
和食の献立の基本となる「一汁三菜」を配膳する場合、手前左に主食のご飯、手前右に味噌汁など汁物、右奥に主菜(メインのおかず)、左奥に副菜、中央奥に副々菜という位置関係が常識として覚えておきたいマナーではあります。
漬物類は真ん中に置かれますが、これは一汁三菜には含まれません。
ご飯茶碗は左に置き、味噌汁はなぜ右なのか、その理由には諸説ありますが日本古来に遡る「左上位」という考え方が有力視されています。
古来に遡る「左上位」という考え方から
ご飯茶碗が左で味噌汁など汁物はなぜ右なのか?、その理由としてもっとも有力なのが、古来飛鳥時代に遣唐使を通じて中国から日本に伝わった「左上位」の考え方が由来というもの。
皇帝は南を向いて座るのがよしとされているで、実際に飛鳥時代以後、平安時代から明治2年まで、天皇の住まいであった京都御所で天皇は正殿の紫宸殿で南向きに座っていらっしゃったといいます。
太陽は、天皇から見て左にあたる東から昇り右にあたる西に沈む。太陽が沈む西(右)より昇る東(左)がより上位にあたるという考え方です。
左上位の考え方は昔の冠位にも表れ、右大臣よりも左大臣の方が格上なのです。
雛人形の並べ方を例にすると、年配風の人形の方が「左大臣」で、若者風の人形の方が「右大臣」だったります。
和服(着物)の襟は自身の右を下にして左を上に合わせて着ることや、演劇など舞台でステージの左を上手、右を下手と呼ばれるのも左上位の考え方にあります。
お米は神からの恵みと尊ぶ文化から
古来より私たち日本人にとって、主食のご飯となるお米はとても大切なものでした。
お米は食べるだけでなく、現在の税金にあたる「年貢」として納めるものでもあり、お米の収穫量は「○万石」などその藩土地の評価基準(石高)として表されていました。
また、日本に現存する最古の歴史書「日本書記」には、天皇の祖先とされるニニギノミコト(瓊瓊杵尊)が地上に降りられた際に「天井で育てた神聖な田んぼの稲穂を我が子孫に授けましょう」と伝えたと記されているお米。
つまり、お米(ご飯)は神からの恵みという意味。古来から稲作中心の日本では、命の糧となるお米(ご飯)こそ尊い食卓の「主」であり、味噌汁など汁物は「従」の位置づけ。
そこに「左上位」の考え方が影響することで、ご飯は左で味噌汁など汁物が右に配膳することを常識とする和食文化は、至極自然な形だといえるでしょう。
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ご飯茶碗を右に置くのは縁起が悪いから?!
ご飯茶碗を右に配膳するのは、縁起が悪いと思われることもあります。
なぜなら、仏教では多くの場合、仏壇へお供え物は左側にお水、右側にご飯を置くことが作法の1つ(宗派によって違いがあります)なっていています。
仏壇へのお供え物と同じ位置へ配膳するのはよくない、縁起が悪いという考え方です。
右利きならご飯が左の方が食べやすいから!?
ご飯茶碗は左に置き味噌汁はなぜ右なのか?は、古来に遡る思想的説が有力な説ではありますが、日本人の多くが右利きということも大きく関係しています。
ご飯茶碗は左手で持ち、お箸は右手で持つ。
ご飯や味噌汁などの汁物のお椀はもちろん、マナー的に副菜・副々菜の小鉢なども胸元まで持ち上げて食べることが許されるということですから、一番多く持ちかえる機会の多いご飯茶碗は左手前に配膳するのが一番食べやすいこともあるでしょう。
ご飯は左で味噌汁が右なら、たびたびご飯茶碗とおかずの小鉢を持ちかえる際に、手や袖を味噌汁に引っ掛けてこぼしてしまうリスクも少ないということなのでしょう。
現代では味噌汁が左の方が適してる?!
昔は床にご膳を置き、食べる人も直接床に座って食べるという位置関係だったので、低い位置にあるご飯や味噌汁のお椀を高く持ち上げるように食べていました。
現在はテーブルやちゃぶ台などに配膳されることで、味噌汁が右側だと逆に引っ掛けやすいと感じる人が多いのも事実。
ご飯と味噌汁の位置関係を常識的なマナーの逆、味噌汁が左でご飯が右にした方が適しているのでは?という意見も多くなっています。
箸を左手に持つ「左利き」の方だと、なおさらご飯茶碗は右の方が都合がいいかもしれません。
あらかじめ利き手がわかっているケースなら常識的なマナーと左右逆の配膳にするべきか?という議論にもなり得ますが、先に紹介したように右にご飯茶碗は仏壇へのお供え物と同じ配置になってしまうのでタブーとされるのが一般的です。
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ミニ丼セットなど麺類の場合は?
うどん屋さんや蕎麦屋さんのミニ天丼セットやミニかつ丼セットなど、麺とミニ丼のセットものでも、ご飯類(丼もの)が左で麺類が右に配膳されることが多いようです。
また中華屋さんだと、炒飯にもれなく付いてくる中華スープは、ほぼ炒飯の右側に配膳されていませんか?
そこに明確なマナーやルールはないといいますが、主となるお米(ご飯)が左で、従となる汁物(麺類)が右となるスタイルは、古来に遡る「左上位」の考え方が少なからず影響しているのかもしれません。
和食にかかわらず私たち日本人のすべての食事において、ご飯茶碗は左で味噌汁など汁物を左とするスタイルが基本になっているのかもしれません。
ご飯茶碗と味噌汁の位置は地域で違う?
和食の献立の基本となる「一汁三菜」の配膳する位置は、手前左に主食のご飯、手前右に味噌汁など、右奥に主菜(メインのおかず)、左奥に副菜、中央奥に副々菜とするのが基本的には全国共通。
家庭科の教科書にも「正しい配膳」として掲載されているので、地域によっての違いはそう大きくはありません。
ただし、関西圏ではご飯茶碗と味噌汁の位置が左右逆に配膳されることも多いので、出張や旅行で訪れた際には「マナー違反では?」と驚くケースもあるかもしれません。
関西圏では味噌汁が左であることも珍しくない!?
全国的にはご飯茶碗が左で味噌汁は右に配膳するのが基本ですが、とあるアンケート調査によると、関西圏とくに大阪・京都・兵庫の3府県ではおよそ7割の人々が「味噌汁はご飯の左奥に置く」と回答された結果が得られたそうです。
なぜ関西圏では左奥に味噌汁を置く配膳が広まっているのでしょうか?。
そこには、昔から関東は武士の町であり、関西は商人の町であるという文化の違いが背景にあるようです。
合理的な商人気質の関西人ならではの位置!
先の「現代では味噌汁が左の方が適してる?!」のところでも紹介しましたが、味噌汁が右側だと食べるときに左手を大きくクロスするように動かさなければならなかったり、奥の主菜(メインのおかず)を取るときにも、邪魔な味噌汁をよけるように右手を大きく動かす必要もあります。
それこそ、うっかり袖に引っ掛けて味噌汁をこぼしてしまうリスクが大きくなるというもの。
そんな不便な常識・マナーを嫌ったのが「時は金なり」、まどろっこしいことを嫌う合理的な商人気質の関西人なら、「そんなん、邪魔な味噌汁は左奥でええやん!」となるわけです。
たしかに、左手でご飯茶碗と味噌汁を同じ左側の近い位置で交互に持ちかえて食べれば、食事の「時短」になりますしね。
まとめ
今回は「ご飯は左で味噌汁はなぜ右に配膳するのか?」をメインテーマに探ってきました。
和食の献立の基本となる「一汁三菜」では、家庭科の教科書にも掲載されるように、手前左に主食のご飯、手前右に味噌汁などの汁物、右奥に主菜(メインのおかず)、左奥に副菜、中央奥に副々菜とするのが基本的には全国共通の常識的なマナー。
日本人であるがゆえ、和食の正しい配膳位置は覚えておいて間違いはありません。
ただし、昔とは食事の内容も食べる姿勢も違いますから、ご家庭での食事では臨機応変に、ご飯や味噌汁のほか、それぞれの料理を食べやすい位置に置き、リラックスして「楽しく味わう」のが一番だと思います。
ご飯は左で味噌汁は右に配膳する基本に反し、関西圏、とくに大阪・京都・兵庫の3府県ではおよそ7割もの人々が「味噌汁はご飯の左奥に置く」といいます。
まどろっこしいことを嫌う合理的な商人気質の関西人の「そんなん、邪魔な味噌汁は左奥でええやん!」も、当然「あり」だと思います。