回転寿司で大人気のサーモン。よく食べているネタを問うアンケートでも、サーモンは常に1位を獲得しています。
大手回転寿司チェーンが開催する「サーモンフェア」も、毎年好評のようですね。
サーモンとは英語で鮭を指すことから、鮭とサーモンは同じ魚と思われるかもしれませんが、こと近年の日本食文化に於いて、鮭とサーモンは別物として扱われていることをご存じでしょうか?。
スーパーの鮮魚コーナーでも鮭とサーモンで表示が異なります。その理由は、日本語と英語の違いや、国産と輸入品の違いではありません。
鮭とサーモンの違いの本質は、食べ方と育て方にあるのです。
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鮭とサーモンの違い!
鮭とサーモンの最大の違いは、生で食べられるかどうか。
ご近所のスーパーの鮮魚コーナーを覗いてみると、サーモンのお刺身はありますが、鮭のお刺身はあまり見掛けないと思いませんか?。
鮭とサーモンの違いは天然か養殖か
鮭とサーモンの最大の違いは「生で食べられるかどうか」にあると紹介したように、鮭は生で食べられず、サーモンは生でも食べられる点。
スーパーの鮮魚コーナーで鮭として扱われているのは、主に銀鮭・白鮭・紅鮭などで、サーモンはアトランティックサーモン(タイセイヨウサケ)やトラウトサーモンなど様々な種類があります。
鮭とサーモン、どちらも生物学的にはサケ科に属す魚なのですが、明確な違いは「生で食べられるかどうか」に係わる天然か養殖かにあります。
鮭は生で食べられない!
鮭を生で食べることが少ない理由は、天然の鮭が餌とする大型のプランクトンオキアミに因みます。
オキアミは稀にアニサキスという寄生虫を食べてしまうことがあり、食物連鎖で餌として食べた鮭の身に寄生することがあるのです。
アニサキスが寄生しやすい魚介類としては鮭のほか、鯖・鯵・秋刀魚・鰹・イカサバ・アジ・サンマ・カツオ・イカなどが代表的。
アニサキスが寄生した鮮魚類を生で食べると、激しい腹痛(アニサキス食中毒)を起こす危険性が高いとさますが、かく言う私も、自家製イカの塩辛でアニサキス食中毒に罹り、病院の胃カメラでアニサキスを取り除く処置を受けた苦い経験があります。
つまり、アニサキスなど寄生虫を宿している危険性が高いと昔から知られることから、昔から天然物の鮭は生食厳禁とされ、焼く・煮るなど火を通して食べるのが当然のモノとなっていきたのです。
鮭の漁獲量90%を誇る北海道には、ルイベと呼ばれる昔から続く郷土料理があります。
ルイベとは、冷凍保存された鮭を小刀などで適当なサイズに切り分け、皮を軽く火で炙り外側がトロリと溶けたものに塩を少し加えて味わいますが、先人が経験的に寄生虫の危険性を避けるために編み出した食べ方なのでしょう。
サーモンはなぜ生で食べられる?
天然の鮭は寄生虫によるアニサキス食中毒などのリスクが高いことに対し、サーモンはペレットと呼ばれる粒状の人工飼料や魚粉で養殖されているので、お刺身など生でも安心して食べられるのです。
さらに、アニサキスは-20℃以下で24時間以上冷凍すると死滅するという性質も加わります。
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日本人と鮭の歴史
鮭が生まれ故郷の川に帰ってくることを「母川回帰」といいますが、江戸時代頃から、この鮭の習性を利用して網などで鮭を獲る漁方が北海道や東北地方で始まります。
生のままでは傷んでしまうので、日持ちのする塩漬けにして全国に流通していきました。現在も受け継がれる「新巻鮭」や「塩引き鮭」もその1つ。
江戸時代の町民の食事は朝夕の2回で、朝食に沢山のご飯を食べる習慣がありました。ご飯(白米)に塩気の強い鮭は広く好まれ、それは鮭の塩焼きが日本の朝食の定番メニューになった由来になります。
生で食べられるサーモンが回転寿司で大ヒット!
近年、回転寿司で「よく食べているネタ」で常に1位を獲得するサーモンも、日本で食べられ始めたのは1980年代半ば頃から。
当時日本で漁業関連の仕事をされていた、ノルウェー人のビョーン・エイリク・オルセンさんのご尽力の賜物なのです。
鮭・鱒類の漁獲量世界一のノルウェー王国では、1970年代から鮭の養殖がおこなわれ、養殖された鮭を生で食べる食文化が生まれました。
日本には古くから、世界的にみても珍しい魚を生で食べる文化がありましたが、こと鮭についてはアニサキス食中毒など寄生虫の心配から、加熱して食べる魚とされていました。
これでは、いくら「生食OKな鮭」と表示しても受け入れてもらえないと考えたオルセンさんは、生食用に養殖された鮭に「サーモン」と名づけて売り出すことを思いつきます。
しかし、オルセンさんがまず売り込んだ伝統的な高級寿司店では、元々鮭は寿司ネタに使われていないことに加え、天然の鮭に比べて身の色が白っぽいなど色が悪いことも相まって、寿司職人には受け入れられてもらえません。
そこで、狙いを回転寿司店に変更します。
回転寿司店で低価格のサーモンが大ヒット!
日本では、1980年代ころから増えはじめた回転寿司。各店それぞれ定番に加わるリーズナブルで目新しいメニューの開発に注力していたところに、オルセンさんが売り込むサーモンがピタリと嵌ったのです。
同時に見た目をより美味しそうなものへと、養殖先であるノルウェー王国では、餌をきれいな赤味を発する物質アスタキサンチンを含むエビやカニへ変更していくなど努力が功を奏します。
近年では、ノルウェー王国のアーナ・ソールベルグ首相が日本とノルウェー間のパートナーシップ・協力関係をより強固にするため来日し、当時の安倍晋三首相とも会談。
ペール・サンドバルグ漁業大臣もサーモンや鯖のPRのために来日し、当時の東京都中央卸売市場の築地市場への訪問や水産業関係者と面会するなどのキャンペーンも相まって、今やサーモンは回転寿司の大ヒットメニューとなっています。
実際に毎年マルハニチロさんが行っている、回転寿司に対する消費者の実態調査でも、サーモンは2012年の調査開始から連続して「よく食べるネタ」1位を獲得し続けています。
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日本でも各地で「ご当地サーモン」が養殖されている!
このように、ノルウェー王国の売り込み努力の甲斐もあり、日本の回転寿司業界を中心に大人気となったサーモンですが、現在は日本国内でもサーモンの養殖が盛んに行われるようになってきました。
今や全国各地の「ご当地サーモン」は、80種類以上にもなるそうです。
愛媛の宇和島みかんサーモンや、滋賀のびわサーモンなど、ご当地ならではの食材を餌にするなど、それぞれの特徴が表れたサービスを楽しむことことができます。
まとめ
サーモンとは英語で鮭を指すことから、鮭とサーモンは同じ魚と思われていた方も多かったのではないでしょうか。
鮭とサーモンの最大の違いは「生で食べられるかどうか」にあります。
天然の鮭を生で食べると、アニサキスなど食中毒を起こす寄生虫の心配があることに対し、人工飼料や魚粉で養殖されるサーモンは、お刺身など生でも安心して食べられるのです。
サーモンは、炙ったり、チーズやオニオンと合わせたりと、さまざまなメニューが楽しめるのも魅力ですね。
どうでしょう、回転寿司でよく食べるネタランキングに、皆さんが好きなネタは入っていましたか?。
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