日本には、意外と知られていない驚くべき意味のある言葉が多くあります。
その中の1つが「白羽の矢が立つ」。
この言葉、普段は何気に使っていることが多いように思えるのですが、
ともすると、「白羽の矢」という言葉のイメージから、とても良い意味合いを感じるのですが、実は、とても喜べない意味・由来がある言葉なのです。
そこで今回は、「白羽の矢が立つ」という言葉の喜べない意味とその由来についてまとめてみました。
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「白羽の矢が立つ」という言葉の意味は?
白羽の矢(しらはのや)というのは、文字通り「白い矢羽根(やばね)」のついている矢のことです。
よく職場などで、「○○の仕事はあなたに白羽の矢が立ったよ」なんて使われ方をしますが、これは、大勢いる職員(社員)の中であなたが抜擢されたときの表現方法の1つと言えるでしょう。
当然ながら、本人は「みんなの代表として選ばれた!バンザイ!」と思う方が多いのではないでしょうか?。
それは、それで現代の使われ方としてはOKなのですが、
この「白羽の矢が立つ」という言葉、本来の意味はかなり恐ろしく、ヤバい意味合いがあり「まったく嬉しくない言葉」だったのです。
「白羽の矢が立つ」という言葉の喜べない由来とは?
それでは、「白羽の矢が立つ」という言葉の喜べない由来とはどのようなものなのでしょうか。
この言葉は、昔々の日本の風習に由来しています。
古来の日本には、天災や疫病などの災禍(さいか)は神様の怒りと考えられがあり、神様の怒りを納めるために、生きた人間を「生贄」として捧げていた時代がありました。
生贄を捧げることで、神様の加護を得て災禍を免れようとしたのです。
生贄となるのは、大抵は少女でした。
村の偉い人たちが話し合い、生贄を差し出す家に選ばれた屋根には白羽の矢を立て、神様にお知らせする目印としたのです。
このことから本来「白羽の矢が立つ」とは、「多くの者の中から犠牲者として選び出される」という喜べない意味として使われてきた言葉なのです。
参考:日本大百科全書(ニッポニカ)
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「白羽の矢が立つ」にまつわる日本昔ばなし
まんが日本昔ばなしに、白羽の矢が立つの意味をよく表した「播磨のめっかい」という話があります。
むかし福島のある村では、家の屋根に白羽の矢が立つと、その家の娘を鎮守様に捧げなければならないという掟がありました。
ある年、村の長者の家に白羽の矢が立ち、7日以内に一人娘を生贄に差し出さなければなりません。
とても悲しんだ長者は、昔から家に来ている富山の薬売りにその話をしたところ、薬売りは生贄を求める正体を突き止めるために、1人で山の上の鎮守様へと向います。
夜になり、薬売りが鎮守様の縁の下に隠れて様子をうかがうと、なにやら4匹の大きな化け物が社(やしろ)の中に入って行くではありませんか。
その化け物たちは、社の中でいろいろな話をしていましたが、その中で「播磨の国のめっかい犬にこの事を知られたら、我らの命はないだろう」との話を聞いた薬売りは、このことを長者に話をし、さっそく播磨の国(現在の兵庫県あたり)に飛脚を走らせ、化け物たちが恐れる「めっかい犬」を連れてきたのです。
そして、めっかい犬を娘の代わりに、お棺の中に入れて村人は鎮守様の社へと運びます。
薬売りは、刀と大きな鍵を持って、化け物たちが社の中に入ると、社の扉に鍵を掛けて化け物たちが逃げられないようにしました。
そうとは知らない化け物たちは、生贄として捧げられた娘を食らうべく、お棺を開けました。
すると、中から「めっかい犬」が飛出して、化け物たちを倒していったのです。
驚いたことに、めっかい犬が倒した化け物は、この辺りの山に何百年も住む大ヒヒでした。
そして、これ以降は村の家に白羽の矢が立つことは無くなりました。
めでたし・めでたし…。
参考:まんが日本昔ばなし|播磨のめっかい
めっかい犬とは?
「めっかい犬」とは、犬の種類か?それとも福島地方の方言なのか?。
そもそも播磨の国(現在の兵庫県あたり)にも「めっかい」という言葉は見つからないので、いろいろ調べてみると…
「めっかい」の「め」は滅亡の「め」を表し、「かい」は妖怪の「かい」を表す言葉なのだとか。
つまり、妖怪をも滅亡させるほどめっぽう強い犬のことを「めっかい犬」と呼んでいたようです。
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現代の「白羽の矢が立つ」という言葉の使い方の変化
大辞林(第三版)の解説では、「白羽の矢が立つ」の意味を次の2種類としています。
① 多くの人の中から犠牲者として選ばれる
② 多くの人の中から特に選ばれる
このことから、本来の「犠牲者として選ばれる」だけでなく「特に選ばれる」という意味が追加されていることがわかります。
それは、白羽の矢が立つの意味が「喜べない言葉」のイメージだけでなく、「嬉しい言葉」のイメージでも使われるようになってきたことを示してします。
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「白羽の矢が立つ」の言葉の誤用に注意!
最近では「白羽の矢が立つ」ではなく、「白羽の矢が当たる」という言い方をする人もいらっしゃいます。
たしかに「矢」という言葉から「当てる・当たる」というイメージがあるからでしょう。
しかし、元々「白羽の矢」というのは、神様(神様と思われていた化け物)が生贄の目印として家の屋根に「立てた」ものであることからして、「白羽の矢が立つ」が正しい言葉の使い方です。
また、「白羽の矢が刺さる」という使い方も正しくありませんのでご注意くださいね。
まとめ
現在「白羽の矢が立つ」という言葉は、良い意味と悪い意味の両方で使われています。
もし、自分に対して「白羽の矢が立つ」と使われた場合、どのような状況で使われているのかを考えてみましょう。
良い意味、悪い意味、どちらの意味で「白羽の矢が立った」のかを考えることで、自分自身の受け取り方も変わってくるのではと思います。
願わくば「良い意味」で使われるように、日頃からしっかりアピールしていく必要がありそうですね。
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